12月27日、政府は令和7年度予算案を閣議決定しました。
115兆円を超える予算案に、石破首相は野党への丁寧な説明と対話を通じて理解を求める方針です。少数与党という状況下で、今後の国会での議論の行方が注目されています。
本記事では、令和7年度予算のうち、経済産業省の予算案について見ていきます。
▼▼▼日々配信中!無料メルマガ登録はこちら▼▼▼
メルマガ会員登録する
この記事の目次
経済産業省 令和7年度予算の概要
経済産業省の令和7年度予算案では、総計で2兆524億円が計上されました。これは令和6年度当初予算額の1兆9072億円と比べて、約1450億円の増加です。
このうちエネ特繰入を除いた一般会計は3525億円、GX推進対策費等を除いたエネルギー対策特別会計が7183億円となりました。
出典:経済産業省 令和7年度経済産業省関連予算案等の概要
予算案における7つの重点分野
それでは、具体的な予算内容を見ていきましょう。主な項目としては、以下の7つが挙げられました。()は当初予算額です。
①国内投資拡大の継続・対日投資の拡大(1兆4152億円) |
②イノベーション・新陳代謝の加速(3077億円) |
③国民の所得向(1155億円) |
④GXの実現とエネルギー安定供給の確保(①②で記載) |
⑤経済安全保障の確保(73億円) |
⑥大阪・関西万博(27億円) |
⑦経済社会の基盤を支える最重要課題(598億円) |
なお各項目の合計金額は、再掲を含みます。
令和7年度当初予算で実施される事業とは
各項目のうち、主な施策や補助金などの事業は、以下のとおりです。
国内投資拡大の継続・対日投資の拡大(1兆4152億円) |
■省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金(760億円) |
■需要家主導型太陽光発電及び再生可能エネルギー電源併設型蓄電池導入支援事業(98億円) |
■エネルギー構造高度化・転換理解促進事業費補助金(79億円) |
■省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金(760億円) |
■水素等のサプライチェーン構築のための価格差に着目した支援事業(357億円) |
■ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業(1617億円(うち、GX1502億円)) |
■次世代半導体の量産等に向けた出資事業(1000億円) |
■クリーンエネルギー自動車の普及促進に向けた充電・充てんインフラ等導入促進補助金(100億円) など |
GX2040ビジョンおよびエネルギー基本計画の改定に際し、エネルギーの価格上昇リスクや供給途絶リスクへの対応として、再生可能エネルギーの活用や省エネルギー化に向けた施策が多く盛り込まれました。
イノベーション・新陳代謝の加速(3077億円) |
■次期航空機開発等支援事業(81億円) |
■ウラノス・エコシステムの実現のためのデータ連携システム構築・実証事業(22億円) |
■GXサプライチェーン構築支援事業(610億円) |
■資源自律経済確立に向けた産学官連携加速化事業(9.5億円) |
■中小企業等海外展開支援事業(11億円) など |
半導体サプライチェーン・基盤インフラの有効活用や整備、強靱化が目指されます。また、世界的な競争に向けたAI技術等の発展に関する施策などが取り上げられました。
国民の所得向(1155億円) |
■中小企業資金繰り支援事業(223億円) |
■中堅・中小企業の賃上げに向けた省人化等の大規模成長投資補助金(当初8.7億円) |
■海外ビジネス強化促進事業(28億円) |
■地域デジタル人材育成・確保推進事業(8.6億円) など |
中小企業の賃上げや働き方改革を通じた、地域企業の育成と成長に重点が置かれました。
経済安全保障の確保(73億円) |
■産業サイバーセキュリティ対策の強化に向けた環境整備事業(54億円) など |
我が国の産業・技術基盤の維持・発展を目指し、技術優位性獲得に向けた投資支援やセキュリティ・クリアランス制度を活用した産業界・主要国との戦略的な連携が行われます。
大阪・関西万博(27億円) |
■国際博覧会事業(26億円) |
大阪・関西万博の政府館解体、各国・国際機関の参加・出展の確保等を⾏います。
経済社会の基盤を支える最重要課題(598億円) |
■福島イノベーション・コースト構想推進施設整備等補助金(地域復興実用化開発等促進事業)(45億円) |
■地方公共団体による小規模事業者支援推進事業(10億円) |
■小規模事業対策推進等事業(61億円の内数(54億円の内数)) など |
福島第一原子力発電所の廃炉の安全かつ着実な実施、ALPS処理水処分の安全性確保などが盛り込まれました。また、足元の物価高に対する対応も継続される見込みです。
概算要求との違いは?
経済産業省の令和7年度概算要求では、合計で2兆3596億円の予算が組まれていました。また主要な7つの項目には以下のように予算が割り当てられていました。
①国内投資拡大の継続・対日投資の拡大:1兆6335億円
②イノベーション・新陳代謝の加速:3135億円
③国民の所得向上:1394億円
④GXの実現とエネルギー安定供給の確保 ※(1),(2)で記載
⑤経済安全保障の確保:78億円
⑥大阪・関西万博:312億円
⑦経済社会の基盤を支える最重要課題:856億円
すべての項目が当初予算では減額となりました。たとえばGX・省エネ投資の推進として、概算要求で580億円が計上されていた「高効率給湯器導入促進による家庭部門の省エネルギー推進事業費補助金」や、350億円が計上された「省エネルギー投資促進支援事業費補助金」は、令和6年度補正予算に盛り込まれたため、令和7年度予算案には記載がありませんでした。予算案全体では、3072億円の減額です。
経済産業省の令和7年度概算要求については以下のコラムをご覧ください。
まとめ
経済産業省の令和7年度予算案では、総額2兆524億円が計上されました。これは前年度比約1450億円の増加となる一方、概算要求額からは3072億円の減額です。
主な重点項目としては国内投資拡大(1兆4152億円)やイノベーションの加速(3077億円)、国民の所得向上(1155億円)などが挙げられました。
少数与党という現在の政治状況下で、立憲民主党をはじめとする野党は税金の使途について慎重な審議を求めています。議論の行方を注視し、予算の方向性を見極めながら、来年度のビジネス計画に役立てていきましょう。