
深刻化する人材不足の解消を目指し、東京都と東京観光財団では「観光関連事業者による旅行者受入対応力強化支援事業補助金」が設置されました。これは人材確保と定着・育成を支援する制度で、令和7年度では外国人材とDX人材を対象にした拡充があります。
補助率は最大3/4、上限額は1事業者あたり300万円です。今回は観光関連事業者による旅行者受入対応力強化支援事業補助金の概要や、一見すると補助事業名が類似するインバウンド対応力強化支援事業との違いをまとめました。
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この記事の目次
観光関連事業者による旅行者受入対応力強化支援事業補助金とは
「観光関連事業者による旅行者受入対応力強化支援事業」は、観光産業の深刻な人材不足改善に向けて、都内の観光関連事業者が行う人材確保や人材定着・育成を目的とした取り組みを支援するものです。
まずは昨年度からの拡充内容や、類似する「インバウンド対応力強化支援事業」との違い、補助事業全体の概要をみていきます。
令和6(2024)年度からの拡充
令和6年度では「人材の確保」「人材の定着・育成」という2本柱でしたが、令和7年度からは対象人材が次の3区分になりました。
・一般人材
・外国人材(新設)
・DX人材(新設)
それぞれの人材区分に応じた補助対象経費が設定され、より具体的な支援が可能になりました。さらに「外国人材」と「DX人材」は、「一般人材」よりも補助率が高くなっています。
令和7年度新規事業 インバウンド対応力強化支援事業との違いは?
令和7年度に新しく始まった「インバウンド対応力強化支援事業」は、東京都内の宿泊施設・飲食店・免税店・体験型コンテンツ提供施設等を対象にした支援です。訪都外国人旅行者のニーズに対応した利便性や快適性の向上を目指す取り組みを支援します。
インバウンド対応力強化支援事業と観光関連事業者による旅行者受入対応力強化支援事業補助金の主な違いは、以下のとおりです。
(1) 対象の違い | |
■インバウンド対応力強化支援事業 | 体験型コンテンツ提供施設などが含まれる |
■観光関連事業者による旅行者受入対応力強化支援事業補助金 | 体験型コンテンツ提供施設などは対象外 |
(2) 対象事業の違い | |
■インバウンド対応力強化支援事業 | 「多言語対応」や「防犯カメラの設置」など、インバウンド対応力強化のために実施する事業が対象 |
■観光関連事業者による旅行者受入対応力強化支援事業補助金 | 「人材の確保に関する事業」や「人材の定着・育成に関する事業」、関連する「コンサルティング」が対象 |
インバウンド対応力強化支援事業では施設の改修・設備導入等が支援されるのに対し、観光関連事業者による旅行者受入対応力強化支援事業補助金は人材の育成・定着を目指す取り組みが対象となります。
補助対象事業者
ここからは、観光関連事業者による旅行者受入対応力強化支援事業補助金について、詳しくみていきます。補助の対象となる事業者は、以下のとおりです。
■東京都内に登記簿上の本店または支店を有し、東京都内で旅行者向けに事業を営んでいること |
■以下のいずれかであること (1) 「旅館・ホテル営業」「簡易宿所営業」を行う施設を運営している (2) 旅行業法の登録を受けて、営業を行っている旅行事業者 (3) 食品衛生法の飲食店営業または喫茶店営業の許可を受けて、「EAT東京」の「外国語メニューがある飲食店検索サイト」に掲載されている店舗を運営する飲食事業者 (4) 免税販売手続を行う消費税免税店の許可等を受けた免税事業者 (5) 観光周遊および空港アクセス等の事業を行う車両を有する観光バス事業者 (6) 東京観光タクシ―認定ドライバー等の資格を有する社員が常駐する観光タクシー事業者 (7) その他、旅行者向けに直接サービス開発・提供を行っている観光関連事業者 |
なお「旅館・ホテル営業」「簡易宿所営業」以外は、中小企業者のみが対象です。
また以下の場合は、補助の対象外です。
- 暴力団関係者または風俗営業者など
- 過去に補助事業の交付決定取消し・法令違反等不正の事故などを起こしたもの、または刑事法令による罰則を受けたもの
- 事業の継続性について不確実な状況が存在しているもの
- 休眠会社として解散したものとみなされているもの
- 都税等の未申告・滞納がある、または東京都や政策連携団体に対する賃料・使用料等の債務支払が滞っているもの
- 宗教活動や政治活動を主たる目的とする団体等
- その他
ただし宗教団体等であっても、宿泊事業が宗教活動と明確に切り離されている場合は対象となります。
補助対象事業・経費
補助の対象となる事業と経費は、以下のものです。
(1) 一般人材
■求人広告への掲載
・求人広告掲載費
・記事制作費
■転職エージェント等を活用した人材の採用
・仲介手数料
■求人・転職イベントの開催・出展
・出展費
■採用サイト・イメージ動画・求人パンフレットの作成
・求人サイト制作費
・イメージ画像撮影費
・動画制作費
・パンフレット制作費
■外部研修・社員教育の実施
・外部講師等への謝金・交通費
・研修等会場費
・教材、研修資料制作費
・語学、資格取得費
・Webラーニング利用料
・委託費
■マニュアル・動画の作成
・マニュアル制作費
・動画制作費
■人材の定着・育成に関するコンサルティング
・コンサルティング費
(2) 外国人材
■外国人材に特化した専門求人広告への掲載
・求人広告掲載費
・記事制作費
■転職エージェント等を活用した外国人材の採用
・外国人材仲介手数料
■外国人材に特化した専門求人・転職イベントの開催・出展
・出展費
■外国人材に特化した採用サイト・イメージ動画・求人パンフレットの作成
・求人サイト制作費
・イメージ画像撮影費
・動画制作費
・パンフレット制作費
■特定技能外国人受入の支援委託
・特定技能外国人1号の委託支援費
■外国人材受入の住環境確保に要する初期費用
・不動産仲介手数料
・賃貸契約の保証料
・礼金
■外国人材の受入環境整備を目的とした研修の実施
・外部講師等への謝金・交通費
・研修等会場費
・教材・研修資料制作費
・委託費
(3) DX人材
■高度なDX人材を求人要件とした求人広告への掲載
・求人広告掲載費
・記事制作費
■転職エージェント等を活用した高度なDX人材の採用
・外部講師等への謝金・交通費
・研修等会場費
・教材・研修資料制作費
・資格取得費
・Webラーニング利用料
・委託費
なおDX人材とは、以下のレベルを指します。
- IPAにおける基本的・応用的知識・技能にあたる情報処理技術者
- AWSにおけるFoundational、Associate
- 上記に準じるもの
補助率・補助額
中小企業 | 大企業(宿泊事業者に限る) |
補助対象経費の2/3以内 (外国人材・DX人材に関する事業につい ては3/4以内) | 補助対象経費の1/2以内 (外国人材・DX人材に関する事業につい ては2/3以内) |
いずれも1事業者あたり300万円(コンサルティングに係る経費は100万円)が上限です。
申請について
申請は、郵送またはJグランツ(電子システム)にて行います。全体の流れは、以下のとおりです。
出典:申請の手引き
そのほか、募集期間や必要な書類をまとめました。
募集期間・必要書類
令和7(2025)年4月1日(火)から令和8(2026)年3月31日(火)まで
郵送は当日消印有効、Jグランツは17時締切です。
なお、補助金申請額が予算額に達した時点で、受付終了となります。
【必要書類】
申請にあたっては、主に以下の書類の提出が必要です。
- 交付申請書
- 補助事業計画書
- 補助事業企画書
- 誓約書
なお公式ホームページには、各書類の記入例が公表されています。申請前には必ず確認してください。
まとめ
観光関連事業者による旅行者受入対応力強化支援事業補助金は、東京都内の観光産業における人材確保・育成を支援する制度です。令和7年度からは対象を一般人材、外国人材、DX人材の3つに分け、特に外国人材とDX人材は補助率が優遇されました。
インバウンド対応力強化支援事業が施設改修等を支援するのに対し、観光関連事業者による旅行者受入対応力強化支援事業補助金は人材に関する取り組みに特化しています。
急増する外国人観光客の取り込みは、観光業にとって重要な課題です。支援策を上手に取り入れ、負担の少ない企業改革を目指しましょう。
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