人手不足を背景に、パートや契約社員を正社員へ転換する動きが加速しています。しかし、転換して終わりにしてしまうと「名ばかり正社員」となり、かえって早期離職を招くことも少なくありません。転換後の育成や制度整備まで手が回らない、と感じている経営者・人事担当者の方も多いのではないでしょうか。
そこで活用したいのが、東京都の「東京都正規雇用転換安定化支援助成金」です。国のキャリアアップ助成金(正社員化コース)の支給決定を受けた都内の中小企業が、転換後の定着支援や処遇改善に取り組んだ場合に、東京都が独自に上乗せ支給する制度で、令和8年度(2026年度)は最大190万円が交付されます。
令和8年度からは制度名の変更に加え、対象労働者数の上限が3人から5人へ拡大し、「介護支援制度整備加算」が新設されました。さらに令和8年7月1日付で申請の手引きが改正され、キャリアアップ助成金の書類の取扱いが変更されています。令和8年度は第1回から第6回まで受付回があり、第5回の交付申請受付は令和8年9月1日から9月30日までです。本記事では、制度の全体像から金額の内訳、申請スケジュール、実務上の落とし穴までを整理して解説します。
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この記事の目次
東京都正規雇用転換安定化支援助成金とは?最大190万円の上乗せ助成
東京都正規雇用転換安定化支援助成金は、国のキャリアアップ助成金(正社員化コース)と連携した東京都独自の上乗せ助成制度です。非正規から正規雇用へ転換した労働者が安心して働き続けられるよう、労働環境の整備や処遇改善を行った都内の中小企業等が対象となります。
金額は、対象労働者数に応じた基本額(1年度・1雇用保険適用事業所あたり上限100万円)と、4種類の加算(最大90万円)で構成され、加算を合わせた上限額が190万円です。
助成の対象となる取組みは、次の4つに整理できます。
・メンター(指導育成者)による指導と研修の実施
・退職金制度・結婚育児支援制度・介護支援制度の整備
・対象労働者の賃上げ
ポイントは、単に正社員化しただけでは受給できないという点です。国のキャリアアップ助成金(正社員化コース)の支給決定を受けていることが大前提で、そのうえで3か月間の支援期間中に所定の取組みを完了させる必要があります。
キャリアアップ助成金(正社員化コース)の要件や助成額は、以下の記事で詳しく解説しています。
令和8年度の変更点は?名称変更・5人へ拡大・介護支援制度整備加算の新設
令和8年度(2026年度)の主な変更点は次のとおりです。いずれも令和8年4月15日に東京都から公表されました。
・1年度・1雇用保険適用事業所あたりの対象労働者数の上限が3人から5人に拡大
・「介護支援制度整備加算」(10万円)を新設
・加算を含めた上限額が190万円に増額
令和8年7月1日の手引き改正で何が変わった?
令和8年7月1日、申請の手引きが改正されました。改正の中身は、キャリアアップ助成金の書類の取扱いです。
交付申請時に必要となるキャリアアップ助成金の支給申請書・支給決定通知書・支給決定番号等について、キャリアアップ助成金が2期制(第1期・第2期)となった以降に本助成金へ申請する場合は、第1期の書類での受付となります。第2期の書類を添付すると受理されないため、手元の通知書がどちらのものか必ず確認してください。セルフチェックリストでもこの点が赤字で強調されています。
手引きは郵送・窓口申請用と電子申請用の2種類があり、いずれも7月1日改正版が最新です。令和7年度以前の様式は使用できません。
なお、東京都は令和7年8月28日付で、本事業で取得した申請情報を生成AIアプリによる審査や当該アプリの開発・検証に利用する場合がある旨を案内しています。審査は生成AIのみで行われるものではなく、最終的な判断は職員が行い、申請情報がAIに学習されることはないとされています。
「東京都正規雇用等転換安定化支援助成金」との違いは?
「東京都正規雇用等転換安定化支援助成金」は令和7年度までの旧名称で、令和8年度から「等」が削除されて「東京都正規雇用転換安定化支援助成金」になりました。制度そのものが廃止されたわけではなく、同じ支援スキームが継続しています。
ただし、検索して出てくる情報が令和7年度以前のものだと、対象労働者数が3人まで、加算が3種類、上限額116万円といった古い内容が表示されます。令和8年度は対象労働者5人まで、加算4種類、上限190万円です。旧名称で保存していたブックマークや様式をそのまま使わないよう注意しましょう。
いくらもらえる?基本額と4つの加算の内訳
令和8年度の助成額は、対象労働者数に応じた基本額(最大100万円)と、4種類の加算(最大90万円)の合計で、最大190万円となります。
基本額は対象労働者1人あたり20万円
基本額は対象労働者1人につき20万円で、5人の場合は100万円が上限となります。
| 対象労働者数 | 基本額 |
|---|---|
| 1人 | 20万円 |
| 2人 | 40万円 |
| 3人 | 60万円 |
| 4人 | 80万円 |
| 5人 | 100万円(基本額の上限) |
上限のかかり方に注意が必要です。手引きでは「本助成金の申請は1年度につき1雇用保険適用事業所ごとに5人が限度で、上限額は加算を合わせて190万円」とされています。交付要綱ではこれに加えて、申請回数を1年度・1雇用保険適用事業所につき5回までと定めています。年度内に複数回に分けて申請することは可能ですが、合計で5人・190万円が天井です。
正社員化コースの支給決定を受けた対象労働者が5人以上いる場合は、5人以内の範囲で労働者を選んで申請します。
見落としやすいのが、同一の対象労働者について交付決定を受けられるのは1回限りという点です。さらに手引きでは、一度使用したキャリアアップ助成金の支給決定通知書および支給決定番号は再度使用できないとされており、同一の支給決定番号に含まれる対象労働者はすべて対象外となります。ここでいう「使用した」とは、本助成金の交付申請を行い、撤回期限までに申請撤回届を提出していない場合を指します。
加算は4種類・最大90万円
基本額に上乗せできる加算は、退職金制度整備・結婚育児支援制度整備・介護支援制度整備・賃上げの4種類です。3つの制度整備加算はいずれも1事業主あたり1回限りとなります。
| 加算項目 | 金額 | 備考 |
|---|---|---|
| 退職金制度整備加算 | 10万円 | 1事業主あたり1回限り |
| 結婚・育児支援制度整備加算 | 10万円 | 1事業主あたり1回限り |
| 介護支援制度整備加算 | 10万円 | 令和8年度新設・1事業主あたり1回限り |
| 賃上げ加算 | 1人12万円(最大60万円) | 対象労働者5人まで |
すべての加算を満額で受けた場合、基本額100万円+制度整備加算30万円+賃上げ加算60万円=190万円という計算になります。
賃上げ加算は「東京都の最低賃金+60円」が条件
賃上げ加算は、単に時給を60円上げればよいという要件ではありません。次の2つをいずれも満たす必要があります。
・賃上げ後の時間当たり賃金額が、東京都の地域別最低賃金額を60円以上上回っていること
支援期間1か月目に支払われる賃金は審査対象外です。時間当たり賃金額の計算では、賞与などの臨時の賃金、時間外・休日・深夜の割増部分、通勤手当・家族手当・精皆勤手当・歩合給などの変動的な手当は含めません。計算には様式第11号(月給制・日給制・時給制・出来高払制の4種類)を使用します。
ここで押さえておきたいのが、最低賃金の改定です。東京労働局は令和8年9月1日、東京都最低賃金を54円引き上げて時間額1,280円に改正することを決定し、同日官報公示を行いました。効力発生日は令和8年10月1日です(現行は令和7年10月3日から1,226円)。
したがって、令和8年10月1日以降の賃金について賃上げ加算を受けるには、賃上げ後の時間当たり賃金額を1,340円以上(1,280円+60円)とする必要があります。手引きにも「支援期間2か月目又は3か月目に支払われる賃金の算定期間中に東京都の最低賃金が改定となった場合、改定後の期間における時間当たりの賃金額が改定後の最低賃金を60円以上上回っていること」と明記されています。支援期間の2か月目・3か月目が令和8年10月以降にかかる回は、この水準を前提に設計してください。
昇給日にも期限があります。昇給日(労働条件変更通知書等に記載する通知日付)は、交付決定日から支援期間の2か月目の末日までである必要があります。交付決定日より前でも、2か月目の末日より後でも対象外です。交付決定日は支援期間の前月20日頃から月末になるため、実質的な猶予は1か月半ほどしかありません。
2026年度の最低賃金の動向は、以下の記事で最新情報をまとめています。
対象となる事業主・労働者の要件は?
対象は東京労働局管内に雇用保険適用事業所を持つ中小企業等で、大企業は対象外です。中小企業の区分は国のキャリアアップ助成金に準じます。
対象となる事業主の要件
以下のすべてを満たす中小企業等が対象となります。
・令和5年4月1日以降に対象労働者を転換等し、東京労働局長がキャリアアップ助成金(正社員化コース)の支給決定をしている
・交付申請日時点および支援期間終了時点で、対象労働者が在籍し支援可能な状況である
・東京都政策連携団体、事業協力団体、東京都が設立した法人ではない
・法人都民税・法人事業税(個人事業主の場合は個人都民税・個人事業税)に未納がない
・交付申請日の前日から起算して過去5年間に重大な法令違反等がない
・最低賃金、固定残業代、36協定、時間外労働の上限規制、年次有給休暇の年5日取得義務、ハラスメント防止措置など労働関係法令を遵守している
・風俗営業等を行っておらず、暴力団員等に該当しない
申告延長や納税猶予の手続きをしていても、未納がある場合は申請できません。また、これらをすべて満たした場合でも、知事が適正と認めない場合は交付対象とならないことがあります。
法人が都内に本社を置いているかどうかは問われません。対象労働者が勤務する事業所が都内にあることが要件です。
対象となる労働者の要件
キャリアアップ助成金(正社員化コース)の交付対象となった労働者で、以下のすべてを満たす方が対象です。
・転換等された日から支援期間終了日まで、引き続き同一の事業主との間で転換または直接雇用後の雇用区分の状態が1年以上継続し、都内の事業所に継続して勤務していること
・支援期間の終了日において有期雇用労働者でないこと
見落としやすいのが「1年以上継続」の条件です。支援期間終了日の時点で、転換等から1年以上が経過している必要があります。第5回(支援期間終了日 令和9年1月31日)であれば、転換日が令和8年1月31日以前でなければなりません。国の正社員化コースは転換後6か月分の賃金支払いを経て支給申請するため、支給決定を受ける頃には1年近く経過しているのが通常ですが、転換から日が浅い労働者を含める場合は必ず確認してください。
もうひとつが「支援期間終了日まで都内で継続勤務」という条件です。支援期間の途中で都外の事業所へ転勤した場合や離職した場合は対象外となります。
支援期間中に何をすればいい?必須となる3つの取組み
助成金を受けるには、3か月間の支援期間中に「指導育成計画書の策定」「メンターの選任と指導」「研修の実施」の3つをすべて完了させる必要があります。1つでも欠けると不支給となるため、支援期間が始まる前にスケジュールを組んでおきましょう。
3年間の指導育成計画書を策定する
所属長(対象労働者の人事評価を決定する部門の長)が対象労働者と面談を行い、了解を得たうえで、3年後の到達目標と年度ごとの目標・具体的な育成内容を記載した計画書を作成します。様式は「様式第6号別紙1 指導育成計画書」で、対象労働者1人につき1枚作成します。
期限が厳格です。所属長と対象労働者の署名まで含めて、支援期間開始日から1か月以内に行う必要があります。署名日は面談実施日(支援期間開始から1か月以内)を記入し、かつ対象労働者の出勤日でなければなりません。署名の日付が支援期間外だと交付対象外となります。
3年間の計画を立てる際は、手引き巻末の「指導育成計画書 年間スケジュール表」(参考様式2)が参考になります。こちらの提出は不要です。
メンター(指導育成者)による指導を行う
対象労働者1名につきメンター1名を選任します。選任は支援期間開始日から2週間を目処に行ってください。メンターは対象労働者と同一の事務所に所属し、同じ係やグループ、同じフロアに在籍するなど、常にOJTで助言できる上司や先輩社員が担当します。特別な資格は不要で、従業員数が少ない事業所では代表取締役や取締役でも構いません。1人のメンターが複数名を担当することは可能ですが、1人の対象労働者に複数名のメンターを立てることはできません。
指導は支援期間中に3回以上・合計3日以上で、手引きでは1か月に1回程度が目安とされています。指導日は対象労働者の出勤日である必要があり、記録はその都度作成してください。オンラインで指導した場合は、メンターと対象労働者それぞれの所在場所を報告書に明記します。
支援期間中に対象労働者の所属事業所が変わった場合や、人事異動でメンターが交代した場合は、新たにメンターを選任し、別様式に分けて作成します。
指導育成計画に基づく研修を実施する
指導育成計画書の年度ごとの取組目標に沿って、外部研修または社内研修を1回2時間以上実施します。1回1時間を2回に分けることも可能です。研修はメンター指導(OJT)とは別のOff-JTで、実技・座学のいずれも実施できます。研修費用は事業主の負担で、時間外や休日に実施する場合は時間外勤務手当の支給か代休・振替休日等の措置が必要です。
オンライン研修には条件があります。講師との質疑応答がその場で可能な双方向型でなければならず、一方的に視聴するだけの研修や、終了後にメールで質問する形式は対象外です。令和8年7月1日改正版で赤字により強調されている点なので、e-ラーニングで済ませようと考えている場合は注意してください。
社内研修は資格取得・技術技能習得を目的とした講習会や勉強会等が対象で、マネージャー会議など通常業務に付随するものやOJTと同様のもの、基本的なマナー研修は対象外です。外部研修は、長期間にわたる研修でも支援期間内に受講日が入っていれば対象になります。東京都が実施するキャリアアップ講習も外部研修として活用できます。
実績報告時には「様式第6号別紙3 研修実施報告書」に加え、研修通知書・パンフレット・テキストの抜粋(5枚程度)のいずれかを添付します。
加算を受けるための要件は?4種類の条件を整理
加算を申請する場合は、必須の3つの取組みに加えて、それぞれの取組みを支援期間中に完了させる必要があります。ポイントは、交付申請日時点で当該制度(類似の規定を含む)がないことです。すでに制度がある場合は対象外で、新たに整備した場合のみが加算対象となります。
| 加算項目 | 主な要件 |
|---|---|
| 退職金制度整備加算(10万円) | 交付申請日時点で退職金制度がなく、支援期間中に新たに退職金制度を整備して就業規則等を労働基準監督署へ届け出て施行するか、新たに中小企業退職金共済制度(中退共)に事業主として加入し、退職金共済手帳の交付を受けること |
| 結婚・育児支援制度整備加算(10万円) | 交付申請日時点で規定がなく、支援期間中に下記6類型のうち「休暇制度から2つ」または「休暇制度と一時金制度から1つずつ」を新たに就業規則等に規定し、労働基準監督署へ届け出ること |
| 介護支援制度整備加算(10万円・令和8年度新設) | 交付申請日時点で規定がなく、支援期間中に介護休暇を有給休暇として取得できるよう新たに規定を整備し、労働基準監督署へ届け出ること。加えて制度内容を社内に周知すること |
| 賃上げ加算(1人12万円・最大60万円) | 支援期間2か月目・3か月目の時間当たり賃金を、前月・前々月の平均と比べて各々60円以上引き上げ、賃上げ後の時間給が東京都最低賃金を60円以上上回っていること |
制度整備加算で失敗しやすいポイント
届出と施行のタイミングが最も多い失敗です。改正後の就業規則等の施行日と労働基準監督署の受付印が支援期間外の日付だと、加算対象外になります。交付申請時には制度がないことを示すため、交付申請日前の施行日となっている最新の就業規則等(監督署の受付印があるもの)を全文提出する必要があり、実績報告時には施行日・受付印がいずれも支援期間内の改正後の就業規則等を提出します。労働者数が10人未満の事業所でも監督署の受付印は必要です。
他の助成金との重複にも注意が必要です。以下に該当すると、対応する制度整備加算は申請できません。
・就職氷河期世代等安定就業サポート助成金(旧・就職氷河期世代等待遇向上支援助成金を含む)または若者世代職場定着促進助成金で同じ加算の交付決定を受けたことがある
・働きやすい職場環境づくり推進奨励金で、すでに同じ内容の制度整備・取組を実施し、または実施予定で交付決定を受けている(結婚・育児支援制度整備加算、介護支援制度整備加算が対象)
・平成29年度まで実施していた「東京都正規雇用転換促進助成金」の中退共加算の支給決定を受けたことがある(退職金制度整備加算が対象)
そのほか、個人型の確定拠出年金(iDeCo、iDeCo+)の新規導入は退職金制度の整備として認められません。中退共の退職金共済手帳は発行に2か月半程度かかる場合があるため、支援期間開始後すみやかに申し込む必要があります。
退職金制度の整備手段として中退共を検討する場合は、以下の記事も参考にしてください。
国のキャリアアップ助成金とどう組み合わせる?
本助成金は「国の助成金とセットで使う制度」です。国のキャリアアップ助成金(正社員化コース)が正社員転換そのものへの助成であるのに対し、東京都の本助成金は転換後の定着支援・処遇改善への上乗せ助成という位置づけになります。両者は助成の対象となる取組みが異なるため、併せて活用できる設計です。
なお交付要綱では、交付事由と同一の事由で交付要件を満たすことになる国・都の他の助成金との併給はできないと定められています。制度整備加算については、前章のとおり都の他の助成金・奨励金との重複排除が個別に規定されています。
国の正社員化コースは1人最大80万円・令和8年度は情報公表加算が新設
キャリアアップ助成金(正社員化コース)の助成額は、中小企業で重点支援対象者を有期雇用から正規雇用へ転換した場合、対象労働者1人につき最大80万円(40万円×2期)です。
さらに令和8年4月8日から「情報公表加算」が新設され、正規雇用労働者等への転換に係る所定の情報を自社ウェブサイトまたは職場情報総合サイト「しょくばらぼ」に公表した場合、1事業所あたり20万円(大企業15万円)が加算されます。令和8年4月8日以降に対象労働者を転換等する場合が対象で、1事業所あたり1回限りです。
キャリアアップ助成金の全コースの助成額は以下でまとめています。
東京労働局への申請と東京都への申請はどちらが先?
順番は国が先、東京都が後です。まず東京労働局にキャリアアップ計画を提出し、対象労働者を転換したうえで正社員化コースの支給申請を行います。東京労働局長から支給決定通知書を受領して初めて、東京都への交付申請が可能になります。
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| ① | キャリアアップ計画を東京労働局へ提出する(転換日まで) |
| ② | 対象労働者を正規雇用へ転換等する |
| ③ | 東京労働局へキャリアアップ助成金(正社員化コース)を支給申請する |
| ④ | 東京労働局から支給決定通知書を受領する |
| ⑤ | 東京都へ本助成金の交付申請書を提出する |
| ⑥ | 東京都から交付決定通知書が届く(受付期間終了後1か月程度) |
| ⑦ | 3か月の支援期間中に支援事業を実施する |
| ⑧ | 東京都へ実績報告書を提出する |
| ⑨ | 額の確定通知後、指定口座に助成金が振り込まれる |
キャリアアップ助成金の支給申請から支給決定までにも数か月かかります。「都の締切に間に合わせよう」と思っても、国の支給決定通知書がなければ申請できない点に注意してください。前述のとおり、2期制となった以降の申請では第1期の書類が必要です。
令和8年度の申請スケジュールと申請方法は?
令和8年度は第1回から第6回まで申請回が設定されており、各回とも「交付申請受付期間→3か月の支援期間→実績報告受付期間」というサイクルで進みます。
令和8年度の申請回一覧
| 申請回 | 交付申請受付期間 | 支援期間 | 実績報告受付期間 |
|---|---|---|---|
| 第1回 | 令和8年5月1日~5月31日 | 令和8年7月1日~9月30日 | 令和8年10月1日~10月25日 |
| 第2回 | 令和8年6月1日~6月30日 | 令和8年8月1日~10月31日 | 令和8年11月1日~11月25日 |
| 第3回 | 令和8年7月1日~7月31日 | 令和8年9月1日~11月30日 | 令和8年12月1日~12月25日 |
| 第4回 | 令和8年8月1日~8月31日 | 令和8年10月1日~12月31日 | 令和9年1月1日~1月25日 |
| 第5回 | 令和8年9月1日~9月30日 | 令和8年11月1日~令和9年1月31日 | 令和9年2月1日~2月25日 |
| 第6回 | 令和8年10月1日~10月31日 | 令和8年12月1日~令和9年2月28日 | 令和9年3月1日~3月16日 |
受付は各期間の初日8時30分から最終日17時15分までです。2026年9月時点では第5回(9月1日~9月30日)が受付中です。
第6回については、東京都自身が回避を推奨しています。第6回の実績報告受付期間は3月1日から16日までと他の回より短く、手引きでは「受付期間内に提出書類がそろわない場合、助成金を受けられなくなることがあります。そのため、できるだけ第1回~第5回の受付回での申請をご検討ください」と案内されています。第6回で申請する場合も、受付期間のできるだけ早い時期に実績報告書を提出するよう求められています。
なお、予算の範囲を超えた場合は年度途中でも申請受付が終了することがあります。「まだ回数が残っている」と考えず、要件が整った時点で早めに動くことをおすすめします。
電子申請(Jグランツ)と郵送はどちらを選ぶ?
申請方法は電子申請(Jグランツ)または郵送・窓口持参の2種類で、手引きもそれぞれ別に用意されています。
電子申請には法人共通認証基盤「GビズIDプライム」のアカウントが必要です。デジタル庁の審査を経るため発行に時間がかかり、間に合わないことを理由とした申請期日の猶予はありません。アカウントを取得できない場合は郵送での申請となります。電子申請では画面への直接入力が中心で、添付書類はすべて原本をスキャンまたは撮影したPDFまたはJPGとし、白黒モードでデータ化します。コピーやFAXをスキャンしたものは不可です。
交付申請書を電子申請で提出した場合、その後の実績報告書・撤回届・中止申請書・再提出書類もすべて電子申請で行う必要があります。逆に郵送・窓口で提出した場合は、以降を電子申請に切り替えることはできません。最初にどちらで進めるかを決めておきましょう。
電子申請には見落としやすい関門があります。Jグランツでは、交付決定後に「ユーザーレビュー」というアンケートに回答・申請しないと、実績報告書のフォームに進むことができません。ユーザーレビューを申請し、都で受付処理が完了して初めて実績報告の申請ボタンが表示される仕組みです。実績報告の直前に気づくと締切に間に合わない可能性があるため、交付決定を受けたら早めに済ませておきましょう。実績報告受付期間が短い第6回では特に注意が必要です。
GビズIDの取得方法は以下の記事で解説しています。
申請から入金までどれくらいかかる?
申請から具体的な入金までの期間は、公募要領でははっきりと示されていません。第1回で申請した場合、交付申請(5月)から3か月の支援期間(7月~9月)、実績報告(10月)、審査を経て入金となります。助成金は後払いのため、資金繰り計画に織り込んでおく必要があります。
申請時には事業実施計画書兼交付申請書、誓約書、支払金口座振替依頼書、キャリアアップ助成金支給決定通知書の写しなどが必要です。関係書類は交付決定があった年度の終了後5年間の保存が求められます。
申請前に確認しておきたい注意点
書類不備や要件の取り違えによる不支給を防ぐため、申請前に以下を確認しておきましょう。
・キャリアアップ助成金が2期制となった以降の申請の場合、第1期の支給申請書・支給決定通知書・支給決定番号を使用しているか
・その支給決定通知書・支給決定番号を、過去に本助成金で使用していないか
・セルフチェックリスト(交付申請時)で提出書類を確認したか
・対象労働者の転換日が令和5年4月1日以降で、支援期間終了日までに転換から1年以上経過するか
・対象労働者を申請前に確定できているか(撤回期限後は変更・追加不可)
・支援期間中に指導育成計画・メンター指導・研修の3点をすべて実施できる体制があるか(計画書の署名は支援期間開始日から1か月以内)
・研修をオンラインで実施する場合、講師との質疑応答が可能な双方向型か
・加算を狙う場合、対象の制度が交付申請日時点で存在していないか
・加算を狙う場合、就業規則の改定・労働基準監督署への届出・施行まで支援期間内に完了できるか
・他の都の助成金・奨励金で同じ加算や同じ制度整備の交付決定を受けていないか
・賃上げ加算を狙う場合、昇給日が交付決定日から支援期間2か月目の末日までに収まるか
・賃上げ加算を狙う場合、賃上げ後の時間給が1,340円以上(令和8年10月1日以降)になるか
本助成金は、事業計画を競い合う採択方式ではなく、定められた交付要件や取組内容に基づいて審査される制度です。ただし、書類不備や要件不足があれば交付されず、予算の範囲を超えた場合は年度途中でも受付が終了することがあります。判断に迷う点があれば、東京都正規雇用化推進窓口(03-6205-6730/平日8時30分~17時15分)に事前確認しておくと確実です。
東京都正規雇用転換安定化支援助成金に関するよくある質問
キャリアアップ助成金との違いは?
国のキャリアアップ助成金は正社員転換そのものへの助成で、対象労働者1人につき最大80万円です。東京都の本助成金は転換後の定着支援・処遇改善への上乗せで、1年度・1雇用保険適用事業所あたり最大190万円となります。本助成金を受けるには、まず東京労働局長から正社員化コースの支給決定を受けていることが前提です。
「正規雇用等転換安定化支援助成金」と同じ制度?
同じ制度です。令和8年度から「等」が削除されて現在の名称になりました。旧名称で公開されている情報は対象労働者3人・上限116万円など古い内容の場合があるため、令和8年度の情報かどうかを必ず確認してください。
転換したばかりの社員も対象になる?
転換等された日から支援期間終了日まで、雇用区分の状態が1年以上継続していることが必要です。支援期間終了日の時点で転換から1年未満の場合は対象になりません。申請回によって支援期間終了日が異なるため、転換日から逆算して確認してください。
年度内に何回申請できる?
対象労働者は1年度・1雇用保険適用事業所あたり5人までで、加算を含めた上限額は190万円です。交付要綱では申請回数を5回までと定めています。ただし撤回期限を過ぎてから事業計画を中止した場合も、年度内の申請回数にカウントされます。
個人事業主でも申請できる?
東京労働局管内に雇用保険適用事業所があれば、個人事業主でも申請可能です。未納がないことを確認される税目は個人都民税・個人事業税となります。代表者の居住地と事業地が異なる場合は、両者の関係が確認できる書類の添付が必要です。
本社が都外でも申請できる?
本社所在地は問われません。対象労働者が勤務する事業所が都内にあり、東京労働局長から正社員化コースの支給決定を受けていれば対象となります。逆に本社が都内にあっても、対象労働者の勤務する事業所が都外の場合は対象外です。
同じ社員で2回申請できる?
同一の対象労働者について交付決定を受けられるのは1回限りです。加えて、一度使用したキャリアアップ助成金の支給決定通知書・支給決定番号は再使用できず、同一の支給決定番号に含まれる対象労働者はすべて対象外となります。
加算は必ず取らないといけない?
加算は任意です。指導育成計画の策定・メンター指導・研修実施という基本の支援事業のみでも申請可能で、対象労働者数に応じた基本額が支給されます。自社の状況に応じて取り組める加算だけを選んで申請する形でも問題ありません。
すでに退職金制度があっても加算は使える?
交付申請日時点で退職金制度が就業規則等に定められている場合や、中退共などの退職金共済制度に加入している場合は対象になりません。従業員の一部のみが加入している場合も申請できません。
支援期間中に対象労働者が休職したら?
休職期間外の出勤時に支援事業をすべて実施できれば交付対象となります。ただし支援期間の全期間を休職した場合や、休職期間中に支援を行った場合は対象外です。
派遣労働者やテレワーク勤務者も対象になる?
派遣労働者は派遣元、出向者は出向元、テレワーク利用者は所属する事務所が「事業所」とみなされ、これらが都内にあれば対象となります。なお対象労働者が派遣労働者や出向者の場合、支援事業は派遣元・出向元で実施します。
まとめ
東京都正規雇用転換安定化支援助成金は、非正規から正規雇用への転換を進める都内の中小企業にとって、人材定着と処遇改善を後押しする制度です。令和8年度からは対象労働者数が5人に拡大し、介護支援制度整備加算も新設されたことで、最大190万円まで受給可能となりました。
国のキャリアアップ助成金(正社員化コース)と組み合わせれば、転換そのものへの助成(国)と、転換後の定着支援への助成(都)という二段構えの支援を受けられます。国の正社員化コースでも令和8年4月8日から情報公表加算20万円が新設されており、あわせて活用すれば受給額をさらに上乗せできます。
一方で、支援期間中に指導育成計画・メンター指導・研修をすべて完了させる必要があり、加算を狙う場合は就業規則の届出まで支援期間内に終わらせなければなりません。申請前には必ず令和8年7月1日改正版の手引きを確認し、余裕をもったスケジュールで準備を進めましょう。
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