東京都では、非正規から正規雇用に転換した従業員のための労働環境作り等を行う事業主に対し「東京都正規雇用等転換安定化支援助成金」を交付しています。本助成金を活用すれば、将来的に従業員のスムーズな転換や人材の定着などが見込めます。
ただし助成対象の従業員は、キャリアアップ助成金(正社員化コース)の支給対象者であることが条件です。また令和5年度より、結婚・妊娠・出産・育児に関する休暇等に助成金を加算などいくつかの変更点があるので、この記事で詳しく解説します。
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この記事の目次
令和5年度 東京都正規雇用等転換安定化支援助成金の変更点
本助成金は、令和5年度より下記の点が変更されています。
【結婚・育児支援制度加算制度を創設】
結婚、妊娠・出産、育児に関連する休暇、または結婚祝い金・出産祝い金等の一時金制度の導入に対し、助成金を加算します。
【賃上げ加算を創設】
対象労働者の時間単価を30円以上賃上げした中小企業等に対し、助成金を加算します。
【現地確認・電話確認(進捗状況の確認)】
現地確認は、支援期間中に事業主の事業所で実施します。(提出代行者の事務所では実施しません)また、事業所の存在や営業実態を確認するため、連絡をせずに外観の確認(看板・表札の掲示、営業の有無等)のみ実施することがあります。同様に、電話確認は事業主に対し実施します。(提出代行者に対しては実施しません)
【支給要件となる対象労働者に関して】
令和2年4月1日以降に、都内事業所で転換もしくは直接雇用された労働者が対象です。
【書類の修正・再提出に関して】
申請時は「申請の手引き」の記載内容をよく確認し、誤って記入した場合は実印(提出する印鑑証明書と同じ印鑑)を用いて訂正印を押す必要があります。それ以外の方法で修正したものに関しては、原則として書類の再提出が求められます。また記載内容の不備や、「申請の手引き」に記載の注意事項等に反する場合も、書類の再提出が求められる可能性があります。
東京都正規雇用等転換安定化支援助成金とは
「東京都正規雇用等転換安定化支援助成金」とは、企業内で非正規から正規雇用に転換した従業員が安心して就業し続けられるよう、キャリアアップ研修や指導育成などの取組を実施する事業主へ助成金を交付する事業です。
キャリアアップ助成金(正社員化コース)※と連携し、計画的な育成計画の策定や退職金制度、結婚・育児支援制度等の労働環境整備や賃上げなどを助成することで、質の良い転換等の促進並びに労働者の雇用安定を図るのが目的です。
※キャリアアップ助成金(正社員化コース)とは
キャリアアップ助成金は、非正規雇用労働者(有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者)の企業内でのキャリアアップを図るため、正社員化・処遇改善の取組を行った事業主を助成する制度です。
「正社員化コース」では、有期雇用労働者もしくは無期雇用労働者を正社員化した事業主に対し、企業規模や正社員化前雇用形態に応じた金額を支給します。
東京都正規雇用等転換安定化支援助成金
ここからは、東京都正規雇用等転換安定化支援助成金の詳細を解説します。
助成対象者
下記の要件全てに該当する中小企業等が対象です。
助成対象者 |
1.東京労働局管内に雇用保険適用事業所がある |
2.令和2年4月1日以降に対象労働者の転換等を行い、対象労働者に関する正社員化コースについて東京労働局長が支給申請を実施し、支給を決定している |
3.交付申請日時点並びに支援期間終了時点で、正社員化コースで転換等した対象労働者が在籍しており、支援可能な状況である |
4.東京都政策連携団体、事業協力団体もしくは東京都が設立した法人でない |
5.法人都民税並びに法人事業税(個人事業主の場合は、個人都民税並びに個人事業税)の未納がない |
6.交付申請日の前日から起算し過去5年間で、重大な法令違反等(違法行為により罰則を受けた、労働基準監督署により送検されたなど)がない |
7.労働関係法令について、就労する地域の最低賃金額や固定残業代等の時間当たり金額などの基準を満たしている |
8.風俗営業、性風俗関連特殊営業、特定遊興飲食店営業、接客業務受託営業、並びにこれらに類する事業を行っていない |
9.暴力団員等、暴力団、並びに法人その他の団体の代表者、役員・使用人その他の従業員または構成員が、暴力団員等に該当する者でない |
10.上記①~⑨以外に知事が適正と認めない場合は、交付対象とならない可能性があります |
助成対象となる労働者
下記の要件全てに該当する労働者が対象です。
助成対象となる労働者 |
---|
1.正社員化コースの支給要件を満たし、かつ支給対象となった労働者である。 2.令和2年4月1日以降に、都内事業所で転換もしくは直接雇用された労働者である。※令和5年度からの変更点 3.転換等された日より支援期間(3か月間)終了日まで、同一の事業主との間で転換もしくは直接雇用後の雇用区分の状態が1年以上継続している。また、都内の事業所で継続的に勤務している労働者で、かつ有期雇用労働者ではない。 |
支給要件
対象労働者に対し、支援期間(3か月間)内に下記の支援事業を実施するものとします。
- 指導育成計画書(3年間)の策定
- メンター(指導育成者)の選任並びにメンターによる3回以上(3日以上)の指導
- 指導育成計画書に則った研修の実施
また下記1~3の取組に対し、助成金をそれぞれ加算します。
加算措置 |
---|
1.退職金制度を新たに導入 2.下記の休暇制度や一時金制度のうち、休暇制度から2つ、もしくは休暇制度並びに一時金制度から1つずつ選び導入 (※令和5年度からの変更点) 〈休暇制度〉 -結婚休暇 -母子保健健診休暇 -妊娠出産休暇 -出産支援休暇 -子どもの看護休暇 〈一時金制度〉 -結婚祝い金 -新居の移転に伴う一時金 -出産祝い金 -入学祝い金 3.対象労働者の時価単価を30円以上賃上げ (※令和5年度からの変更点) |
助成金交付額
対象労働者数に応じて、下表の助成金を交付します。
対象労働者数 | 金額 |
1人 | 20万円 |
2人 | 40万円 |
3人以上 | 60万円 |
また、上記【支給要件】1~3の取組ごとに、下記の助成金を加算します。
1.退職金制度整備加算:10万円
2.結婚・育児支援制度加算:10万円
3.賃上げ加算(賃上げした労働者数に応じて下表の金額を加算)
賃上げした労働者数 | 金額 |
1人 | 6万円 |
2人 | 12万円 |
3人以上 | 18万円 |
手続きの流れ
1.キャリアアップ計画を作成しハローワークへ提出する。
2.ハローワークへキャリアアップ助成金(正社員化コース)の支給を申請する。
3.都へ「正規雇用等転換安定化支援助成金事業実施計画書兼交付申請書」を提出する。
4.支給対象労働者に対し、各支援事業を実施する。
5.都へ「正規雇用等転換安定化支援助成金実績報告書」を提出する。
6.都より「額の確定通知書」が送付され、助成金が振り込まれる。
【申請受付期間】
第2回:令和5年6月1日~6月30日
第3回:令和5年7月1日~7月31日
第4回:令和5年8月1日~8月31日
第5回:令和5年9月1日~9月30日
第6回:令和5年10月1日~10月31日
【申請書の提出方法】
原則は郵送での受付ですが、窓口で提出する場合は開庁時間内に提出する必要があります。
なお令和4年10月より、Jグランツでの電子申請も認められています。
【提出書類】
- 事業実施計画書兼交付申請書
- キャリアアップ助成金(正社員化コース)支給申請書の写し
- 上記の「支給申請書の写し」に関するキャリアアップ助成金(正社員化コース)支給決定通知書の写し
- 誓約書
- 印鑑証明書(原本)
- 納税証明書(原本)
- 会社概要が確認できるもの
法人:商業・法人登記簿謄本(履歴事項全部証明書)、個人:個人事業の開業・廃業等届出書の写し - 支払金口座振替依頼書(新規・変更用)
- 振込口座の通帳もしくはキャッシュカード等口座名義人(カタカナまたはアルファベット)が記載されているものの写し
〈退職金制度整備の加算申請をする場合のみ必要〉
申請時点で最新の就業規則全文の写し(退職金制度が規定されていないと確認するため)
〈結婚・育児支援制度整備の加算申請をする場合のみ必要〉
申請時点で最新の就業規則全文の写し(当該結婚・育児支援制度が規定されていないと確認するため)
〈提出代行者が申請する場合のみ必要〉
委任状
〈控えに受理印を押印されたものを希望する場合のみ必要〉
- 事業実施計画書兼交付申請書の控え
- 返信用封筒(切手貼付)
まとめ
非正規から正規雇用に転換が浸透すれば、企業は優秀な人材を確保しやすくなります。正規雇用であれば長期的な人材育成が可能なので、将来的な事業拡大や企業の成長へと繋がるでしょう。
「東京都正規雇用等転換安定化支援助成金」は、令和5年度より結婚・育児支援制度や賃上げ加算が新たに創設され、助成金の加算対象がより幅広くなりました。人材不足に悩み、人への投資に力を入れたいとお考えの事業者は、ぜひ本助成金の活用を検討してみてはいかがでしょうか。