間もなく令和3年度補正予算が成立する見込みですが、厚生労働省では経済対策の4つの柱のうち「新型コロナウイルス感染症の拡大防止」と「未来社会を切り拓く『新しい資本主義』の起動」に大きな予算を計上しています。
「未来社会を切り拓く『新しい資本主義』の起動」の内容は成長戦略と分配戦略の2つに分かれており、分配戦略では、賃上げへの支援、人的資本への投資や非正規雇用労働者等への分配強化を進めていく方針です。
今回は、補正予算で拡充が予定されている、キャリアアップ助成金についてご紹介します。
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この記事の目次
キャリアアップ助成金とは
キャリアアップ助成金とは、有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者といったいわゆる非正規雇用の労働者の企業内でのキャリアアップを促進する取り組みを実施した事業主に対して支給される助成金です。
キャリアアップ助成金は、非正規雇用労働者に対してどのような取り組みを行うかによって7つのコースに分かれています。
1.正規雇用労働者等へ転換または直接雇用を実施する | 「正社員化コース」 |
2.障害のある労働者を正規雇用労働者等へ転換する | 「障害者正社員化コース」 |
3.賃金規定等の増額改定により賃金の引き上げを実施する | 「賃金規定等改定コース」 |
4.正規雇用労働者と共通の賃金規定等を導入する | 「賃金規定等共通化コース」 |
5.正規雇用労働者と共通の諸手当制度を導入する、または法定外の健康診断制度を導入する |
「諸手当制度等共通化コース」 |
6.非正規雇用労働者を新たに社会保険に加入させると同時に被用者保険の適用と働き方の見直しに反映させるための取組を実施する | 「選択的適用拡大導入時処遇改善コース」 |
7.短時間労働者の所定労働時間を延長すると同時に社会保険に加入させる | 「短時間労働者労働時間延長コース」 |
たとえば正社員コースなら、中小企業の場合、助成額は以下のようになります。
①有期 → 正規:1人あたり57万円(生産性要件を満たす場合は72万円)
②有期 → 無期:1人あたり28万5,000円(生産性要件を満たす場合は36万円)
③無期 → 正規:1人あたり28万5,000円(生産性要件を満たす場合は36万円)
1年度1事業所あたりの支給申請上限人数は①~③合わせて20名までとなっています。
出典:キャリアアップ助成金のご案内
なぜ非正規雇用労働者の正社員化や処遇改善が必要なのか
今回のキャリアアップ助成金拡充には、どういった背景があるのでしょうか。
経済対策で目指す「成長と分配の好循環」とは、中長期的に稼ぐ力を向上させて、その収益を賃上げ等の分配や更なる未来投資へ循環させることで、持続的な成長を実現するというものです。
賃上げのほか、賃金格差の解消、能力開発支援、人材育成など人への投資があって、次の成長へと続くという考え方で、非正規の正社員への雇用形態の転換や処遇改善が進めばモチベーションの向上や収入の増加が見込まれ、消費の活発化につながることが期待されているのです。
こうした人的資本への投資強化の観点から、非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員化や処遇改善を行うキャリアアップ助成金の拡充が行われます。
キャリアアップ助成金拡充の概要
正社員化を一層推進するため、正社員コースの加算措置の対象の追加等を行うとともに、非正規雇用労働者の基本給の賃金規定等を増額改定させた場合に助成する賃金規定等改定コースにおいて、助成額が見直されます。
【正社員化コース】
新型コロナウイルス感染症の影響を受け、就労経験のない職業に就くことを希望する者について、紹介予定派遣の後、派遣先の事業所に正社員として直接雇用された場合、1人あたり28.5万円が加算されます。
また、人材開発支援助成金において高助成率とする一定のIT訓練等を経て正社員化した場合、1人あたり、有期から正規の場合9.5万円、無期から正規の場合4.75万円が加算されます。
【賃金規定等改定コース】
賃金規定の増額改定を全ての非正規雇用労働者に対して行ったか、一部に対して行ったかにかかわらず、賃金増額を行った労働者1人当たりの助成額が同額(一部の場合を増額)となります。
出典:令和3年度 厚生労働省補正予算案(参考資料)Ⅲ.未来社会を切り拓く「新しい資本主義」の起動
現行制度では、すべての有期雇用労働者等の賃金規定等を増額改定した場合と、一部の有期雇用労働者等のみ増額改定した場合で、助成額が異なっています。上記例のように全体のうち3人のみ増額した場合、現行制度だと助成額は70,300円ですが、見直し後は138,750円になります。
出典:令和3年度 厚生労働省補正予算案(参考資料)Ⅲ.未来社会を切り拓く「新しい資本主義」の起動
昇給がすべての非正規雇用労働者に対してか、一部のみかによる助成額の差がなくなることで、見直し後は賃金規定改定を一部の労働者等を対象に行った場合、助成額が増額となります。
手続きの流れ
最後に、それぞれのコースの手続きの流れを確認します。
正社員コース
(1)キャリアアップ計画の作成・提出
雇用保険適用事業所ごとに「キャリアアップ管理者」を配置し、労働組合等の意見をきいて「キャリアアップ計画」を作成し、管轄労働局長の認定を受けます。
(2)就業規則、労働協約その他これに準ずるものに転換制度を規定
(3)転換・直接雇用に際し、就業規則等の転換制度に規定した試験等を実施
(4)正規雇用等への転換・直接雇用の実施
転換後の雇用契約書や労働条件通知書を対象労働者に交付します。また、転換後6か月間の賃金を転換前6か月間の賃金と比較して3%以上増額している必要があります。
(5)転換・直接雇用後6か月分の賃金を支給・支給申請
転換・直接雇用後6か月分の賃金を支給した日の翌日から起算して2か月以内に支給申請します。
(6)審査、支給決定
賃金規定等改定コース
(1)キャリアアップ計画の作成・提出
正社員コースと同じで、雇用保険適用事業所ごとに「キャリアアップ管理者」を配置し、労働組合等の意見をきいて「キャリアアップ計画」を作成し、管轄労働局長の認定を受けます。
(2)賃金規定等の増額改定の実施
増額改定後の雇用契約書や労働条件通知書を対象労働者に交付し、当該賃金規定等に属する有期雇用労働者等が昇給している必要があります。
(3)増額改定後の賃金に基づき6か月分の賃金を支給・支給申請
増額改定後6か月分の賃金を支給した日の翌日から起算して2か月以内に支給申請を行います。
(4)審査、支給決定
まとめ
今回は、補正予算で拡充が予定されている、キャリアアップ助成金についてご紹介しました。政府は人的資本への投資を強化するため、非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップを促進すべく、今回の拡充を行う予定です。
キャリアアップ助成金を活用することで、雇用の安定による労働者のモチベーションの向上や、優秀な人材の確保につながります。
基本給の賃金規定等を2%以上増額改定し、昇給させた場合に助成される「賃金規定等改定コース」では、昇給がすべての非正規雇用労働者に対してか、一部のみかによる助成額の差がなくなるため、取り組みやすくなると思われます。これをきっかけにキャリアアップ助成金の活用を検討してみてはいかがでしょうか。
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