厚生労働省は、生産性向上や非正規雇用労働者の処遇改善、より高い処遇への労働移動などを通じて、企業の賃上げを支援する「賃上げ」支援助成金パッケージを実施しています。本記事では、「賃上げ補助金」「賃金アップ助成金」「ベースアップ助成金」などを探している方に向けて、賃上げに活用できる主な助成金について、2026年度(令和8年度)の最新情報を紹介します。
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この記事の目次
「賃上げ補助金」と「賃上げ助成金」の違いとは?
政府が賃上げを支援するために設けている制度の多くは「助成金」です。
| 項目 | 助成金 | 補助金 |
|---|---|---|
| 主な特徴 | 一定の要件を満たした事業主などに支給される制度が中心 | 政策目的に沿った事業を公募し、審査・採択を経て交付される制度が中心 |
| 審査 | 各制度で定められた支給要件を満たしているか審査される | 申請内容を審査し、採択された事業者が交付対象となる制度が多い |
| 申請時期 | 制度ごとに異なり、申請期間が設けられている場合もある | 公募期間が設定されている制度が多い |
| 賃上げ支援の例 | 業務改善助成金、キャリアアップ助成金など | 設備投資や生産性向上を支援する補助金の中に賃上げ要件が設けられる場合がある |
賃上げ支援金・賃上げ支援手当とは?
「賃上げ支援金」や「賃上げ支援手当」は、特定の正式な制度名称ではなく、賃上げを支援する各種助成金・給付金の総称として使われることが多い言葉です。政府・自治体が賃上げ実施事業者を支援するものには、本記事で紹介する助成金のほか、税制優遇措置(賃上げ促進税制)なども含まれます。
人手不足の背景と賃上げの重要性
現在、少子高齢化に伴う人口減少や、生産年齢人口の減少が進む中、多くの業界で深刻な人手不足が問題となっています。特に、サービス業や介護、建設業などの業種では有効求人倍率が高く、企業が必要な人材を十分に確保できない状況が続いています。こうした状況において、賃金の引き上げ、いわゆる「賃上げ(ベースアップ・昇給)」は、労働者の意欲を高め、離職を防ぐための重要な施策となります。賃上げを行うことで消費が活性化し、経済全体の成長にも寄与します。企業の成長と社会全体の好循環を生むためにも、賃上げは重要な施策であり、今後の労働市場において注目されるテーマです。
「賃上げ」支援助成金パッケージの概要
このパッケージには、以下に示す3つの支援が含まれています。
企業が持続的な賃上げを行うためには、労働生産性の向上が不可欠です。このため、設備投資や人材育成への支援を行い、企業がより効率的かつ競争力のある事業運営を実現できるようにします。
非正規雇用労働者の正社員化や賃金引き上げなど、処遇改善に取り組む事業主を支援します。
スキルアップやキャリアチェンジなどをサポートし、労働者がより高い処遇を受けられるようにします。
以下に、「賃上げ」支援助成金パッケージに含まれる助成金の内容をまとめました。
(1) 生産性向上(設備・人への投資等)への支援
ここで紹介するのは、生産性向上のために設備投資や人材育成を支援する助成金です。賃金アップや労働環境改善、労働者の職業能力の向上を図る取り組みなどを行う事業者に対して助成します。中小企業・小規模事業者が主な対象です。
業務改善助成金(2026年度)
業務改善助成金は、事業場内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)を50円以上引き上げ、生産性向上に役立つ設備投資などを行った場合に、その費用の一部を助成する制度です。
2026年度は、中小企業・小規模事業者のうち、事業場内最低賃金が2026年度の地域別最低賃金未満である事業者などが対象です。
【助成上限額】
賃金の引き上げ額と対象労働者数などに応じて30万円~600万円
賃金引き上げ額に応じて「50円コース」「70円コース」「90円コース」の3区分があります。助成率は、事業場内最低賃金が1,050円未満の場合は4/5、1,050円以上の場合は3/4です。2026年度の申請受付は9月1日に開始され、申請期限は「申請事業場に適用される地域別最低賃金の発効日前日」または「2026年11月30日」のいずれか早い日です。申請前の賃金引き上げや、交付決定前の設備投資は助成対象になりません。
働き方改革推進支援助成金(2026年度)

出典:厚生労働省「令和8年度 働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)のご案内」
労働時間削減や年次有給休暇の取得促進などの環境整備を進めるため、専門家のコンサルティングや生産性向上に役立つ設備・機器の導入を支援します。成果が上がった場合に助成金が支給されます。
2026年度は4月13日から申請受付が開始されています。労働時間の削減などの成果目標に加えて賃上げを達成した場合、賃金の引き上げ率、対象人数、企業規模に応じて助成上限額が加算され、賃上げによる加算は最大720万円です。助成額や上限額は利用するコースや成果目標によって異なります。
出典:厚生労働省「働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)」
人材開発支援助成金(2026年度)

出典:厚生労働省「人材開発支援助成金(人材育成支援コース)のご案内(令和8年8月3日版)」
職業訓練などを通じて、専門的な知識や技能を習得させるための経費や、訓練中の賃金の一部を助成します。
2026年度は、人材育成支援コースに「中高年齢者実習型訓練」が新設されました。また、人への投資促進コースには新規採用助成・職務代行助成、事業展開等リスキリング支援コースには設備投資加算が追加されています。事業展開等リスキリング支援コースについては、2026年8月3日にも制度改正が行われています。
人材確保等支援助成金(雇用管理制度・雇用環境整備助成コース)

出典:厚生労働省「人材確保等支援助成金 雇用管理制度・雇用環境整備助成コースのご案内」
賃金規定制度、諸手当等制度、人事評価制度、職場活性化制度、健康づくり制度などの雇用管理制度の導入や、従業員の作業負担を軽減する機器等の導入によって雇用環境を改善し、離職率の低下を実現した事業主を助成します。
雇用管理制度を複数導入した場合の上限は、賃上げを行った場合100万円です。また、作業負担を軽減する機器等の導入は、賃上げを行った場合に導入経費の62.5%、上限225万円が助成されます。複数の雇用管理制度と機器等を組み合わせ、賃上げ要件を満たした場合は最大325万円となります。
出典:厚生労働省「人材確保等支援助成金(雇用管理制度・雇用環境整備助成コース)」
(2)非正規雇用労働者の処遇改善(正社員化・賃金アップ助成金)
非正規雇用労働者を正社員へ転換したり、賃金を引き上げたりする事業主には、キャリアアップ助成金などの支援制度があります。これらは、正規・非正規の格差をなくすための助成金です。
| 助成金 | 主な対象 | ポイント |
|---|---|---|
| キャリアアップ助成金(正社員化コース) | 非正規雇用労働者を正社員へ転換する事業主 | 正社員転換後に賃金を3%以上増額することなどが要件 |
| キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース) | 非正規雇用労働者の基本給を引き上げる事業主 | 基本給の賃金規定等を3%以上増額改定。中小企業は対象労働者1人あたり最大7万円 |
キャリアアップ助成金(正社員化コース・賃金規定等改定コース)

出典:厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内(令和8年4月8日)」
≪正社員化コース≫
非正規雇用の労働者を正社員に転換し、その上で3%以上の賃上げを行った場合に助成。
≪賃金規定等改定コース≫
非正規雇用の労働者の基本給を定める賃金規定を3%以上増額改定し、その改定後の賃金規定を適用した場合に助成。
2026年度も正社員化コース、賃金規定等改定コースが実施されています。賃金規定等改定コースでは、3%以上4%未満、4%以上5%未満、5%以上6%未満、6%以上の4区分で助成額が設定されており、中小企業の場合は対象労働者1人あたり最大7万円です。
(3)より高い処遇への労働移動等への支援
こちらは、より良い条件での転職や賃金アップを支援する助成金です。仕事を失った人の早期再就職や、中途採用の強化などに取り組んだ場合に助成されます。また、未経験の職種を目指す人の雇用支援、出向後の賃金アップなどに対し支給される助成金もあります。
早期再就職支援等助成金(雇入れ支援コース・中途採用拡大コース)
≪雇入れ支援コース≫
事業規模の縮小などによって離職を余儀なくされた対象労働者を、離職後3か月以内に期間の定めのない労働者として雇い入れ、雇入れ前より賃金を5%以上引き上げた場合などに助成されます。
2026年4月8日以降に離職した対象者を雇い入れた場合、通常助成は1人30万円です。生産指標等により一定の成長性が認められる事業所では、1人40万円の優遇助成があります。
≪中途採用拡大コース≫
中途採用者の雇用管理制度を整備した上で中途採用を拡大し、雇い入れた中途採用者の賃金を雇入れ前と比較して5%以上引き上げた事業主を助成します。
中途採用率を前年同期と比較して5ポイント以上拡大させるなどの要件を満たした場合、対象労働者1人につき20万円が支給されます。生産指標等により一定の成長性が認められる事業所では、1人につき10万円が加算されます。
出典:厚生労働省「早期再就職支援等助成金(雇入れ支援コース)」
出典:厚生労働省「早期再就職支援等助成金(中途採用拡大コース)」
産業雇用安定助成金(スキルアップ支援コース)
労働者のスキルアップを目的として在籍型出向を行い、出向復帰後の賃金を復帰前と比較して5%以上引き上げた場合などに助成する制度です。
2026年4月8日以降に計画届を提出した場合は、出向元事業主だけでなく出向先事業主も支給対象となる場合があります。中小企業の場合、出向元・出向先がそれぞれ負担した出向中の賃金の2/3、中小企業以外は1/2が助成されます。助成期間は最長1年間で、2026年8月1日時点の上限額は1人1日あたり9,110円です。
出典:厚生労働省「産業雇用安定助成金(スキルアップ支援コース)」
助成金の支給までの流れ
助成金によって、申請前に必要な手続きや支給申請のタイミングは異なります。特に、取り組みを始める前に計画の作成・提出や交付申請が必要な制度があるため、実施前に各制度の公募要領やパンフレットを確認してください。
| 制度 | 手続きで注意したいポイント |
|---|---|
| 業務改善助成金 | 賃金引き上げと設備投資の計画を立てて交付申請し、交付決定後に計画を実施します。申請前の賃金引き上げや交付決定前の設備投資は対象外です。 |
| 働き方改革推進支援助成金 | 事業実施計画を含む交付申請を行い、交付決定後に取り組みを実施します。利用するコースによって成果目標や必要書類が異なります。 |
| キャリアアップ助成金 | 正社員化や賃金規定等の改定など、利用するコースごとに対象となる取り組みや支給申請の時期が定められています。 |
| 人材開発支援助成金 | 対象となる訓練では、原則として訓練実施前に訓練計画届などの手続きが必要です。訓練実施後に支給申請を行います。 |
| その他の助成金 | 雇入れや中途採用、在籍型出向など、制度によって事前手続きや支給要件が異なります。取り組みを開始する前に最新の制度案内を確認してください。 |
賃上げ助成金に関するよくある質問
賃上げ補助金と賃上げ助成金は違うものですか?
「賃上げ補助金」と呼ばれることがありますが、厚生労働省が実施する賃上げ支援には「助成金」に分類される制度が多くあります。助成金は各制度で定められた支給要件を満たしているか審査されるのに対し、補助金は公募期間を設け、申請内容の審査・採択を経て交付される制度が中心です。本記事で紹介している業務改善助成金やキャリアアップ助成金は「助成金」です。
正社員に転換して賃金をアップした場合に使える助成金はありますか?
はい、キャリアアップ助成金(正社員化コース)が代表的です。非正規雇用の労働者を正社員に転換し、転換後に3%以上の賃上げを行った場合に助成が受けられます。2026年度も継続して実施されています。詳細は最寄りの都道府県労働局またはハローワークにご確認ください。
中小企業でも賃上げ助成金を受けられますか?
はい、中小企業・小規模事業者も多くの助成金を利用できます。業務改善助成金は中小企業・小規模事業者が対象で、キャリアアップ助成金も中小企業の支給額が大企業より高く設定されているコースがあります。利用できる制度や要件は制度ごとに異なるため、厚生労働省の公式サイトや都道府県労働局で最新情報をご確認ください。
2026年度(令和8年度)も賃上げ助成金は継続されていますか?
はい。業務改善助成金、キャリアアップ助成金、人材開発支援助成金などは2026年度(令和8年度)も実施されています。厚生労働省は令和8年度予算で「賃上げ」支援助成金パッケージを公表しています。ただし、制度内容や申請期間は年度途中に変更される場合があるため、申請前に厚生労働省や都道府県労働局の最新情報をご確認ください。
「賃上げ支援金」や「賃上げ支援手当」という制度はありますか?
「賃上げ支援金」「賃上げ支援手当」は、特定の正式な制度名称ではなく、賃上げを支援する各種助成金や税制優遇措置の総称として使われることが多い表現です。具体的には本記事で紹介する業務改善助成金・キャリアアップ助成金・働き方改革推進支援助成金などが「賃上げ支援」として機能する主な助成金です。
賃上げを成功させるための戦略とは
賃上げを成功させるには、助成金を使うだけでなく、長期的な経営戦略と計画が大切です。会社が賃金を上げ続けるためには、利益を増やすことやコストを減らすことだけでなく、経営全体の効率を良くすることが必要です。
まず、人材戦略をしっかり立てることがカギとなるでしょう。労働者のスキルを上げる、仕事の効率を良くする取り組みを行います。これにより、会社の競争力が高まり、賃金を上げるための資金を確保しやすくなります。
次に、生産性向上のための取り組みも欠かせません。設備投資や新しい技術の導入などにより生産性を上げることが、賃上げに直結する手段になります。
さらに、労働者が働きやすい会社づくりも大切です。成長を感じ、会社の目指す姿に共感できると、賃上げはただの報酬アップではなく、やる気を高めるものになります。これにより、労働者が長く働いてくれるようになり、会社の安定した成長につながります。
まとめ
助成金制度は、企業が賃上げを実施する際の大きな助けとなりますが、無理のない計画が大切です。経営に負担をかけすぎることのないよう、しっかりと準備していきましょう。補助金ポータルでは、専門家とのマッチングサービスも行っておりますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。
主な賃上げ関連助成金のポイントを整理します。
- 業務改善助成金:設備投資+事業場内最低賃金の引き上げで30万〜600万円。中小企業・小規模事業者向け
- キャリアアップ助成金(正社員化コース):非正規→正社員転換+3%以上賃上げで助成。正社員化による賃金アップに活用
- キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース):非正規の基本給3%以上引き上げで助成。賃上げ率が高いほど加算が厚くなる
- 働き方改革推進支援助成金:労働時間削減などの取り組みを支援。賃上げを達成した場合は、引き上げ率・人数・企業規模に応じて助成上限額を加算
- 人材開発支援助成金:訓練を通じた職業能力向上と賃金助成
会社の成長と労働者のモチベーション向上のため、賃上げに活用できる助成金やその他制度の活用をぜひご検討ください。




