政府は、デジタルやカーボンがキーワードとなる新しい資本主義を実現するため、「中小企業のDXの推進」を取り組むべき施策の1つにあげています。
中小企業・小規模事業者が自社の課題やニーズにあったITツールを導入する際の経費を補助する「IT導入補助金」では、令和3年度補正予算において、企業のデジタル化につながる拡充が行われます。
今回は、IT導入補助金の拡充内容と新たな類型の概要についてご紹介します。賃上げに対応するための生産性向上や、インボイス制度への対策として、ITツール導入・デジタル化推進をお考えの方は、IT導入補助金の活用をご検討ください。
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この記事の目次
IT導入補助金のスケジュール
令和3年度に予定されていたIT導入補助金の交付申請は、通常枠・低感染リスク型ビジネス枠ともに、12月22日の5次締切をもって受付を終了しました。交付決定日は、令和4年1月26日を予定しています。
補正予算案におけるIT導入補助金の拡充については、現在開始時期調整中となっています。令和2年度3次補正予算時においては、成立が令和3年1月28日でありその年の4月1日より受付開始となっていました。2か月の準備期間が必要ということを想定しますと、令和3年12月20日に補正予算が成立しましたので2か月の準備期間を経て早ければ3月からスタートされるのではないかと予想されます。遅くとも昨年同様の4月から受付開始となるのではないでしょうか。
IT導入補助金の拡充内容
IT導入補助金について、予定されている拡充内容は以下のとおりです。
- 会計ソフト、受発注ソフト、決済ソフト、ECソフトに補助対象を特化し、補助率を引き上げ(通常1/2のところ2/3または3/4に引き上げ)
- 昨今のITツールがクラウド化していることを踏まえクラウド利用料を2年分まとめて補助
- PC・タブレット、レジ・券売機等の購入を補助対象に追加
- 複数社連携IT導入類型の創設
令和5年10月1日から、消費税の適格請求書等保存方式、いわゆるインボイス制度が始まりますが、IT導入補助金の拡充はインボイス制度導入への対応も見据えつつ、企業間取引のデジタル化を強力に推進するものとなっています。
また、新たにつくられる「複数社連携IT導入類型」(1事業あたりの補助上限額は3,300万円)では、複数の中小・小規模事業者が連携して実施するITツールおよびハードウェア導入を支援するとしています。
IT導入補助金(デジタル化基盤導入枠)の類型について
令和3年度補正予算における拡充で、前項の内容が盛り込まれることにより、2つの類型ができます。それが「デジタル化基盤導入類型」と「複数社連携IT導入類型」です。
出典:サービス等生産性向上IT導入支援事業(IT導入補助金)令和3年度補正予算の概要
上の図の、濃い青色の部分がデジタル化基盤導入枠です。(参考として水色の部分に通常枠のA類型とB類型が載っています。)では「デジタル化基盤導入類型」と「複数社連携IT導入類型」について、それぞれ概要を確認しましょう。
デジタル化基盤導入類型とは
中小・小規模事業者を対象に、インボイス制度も見据えたデジタル化を一挙に推進するため、会計ソフト・受発注ソフト・決済ソフト・ECソフトの導入費用に加え、PC・タブレット、レジ・券売機等の導入費用を支援する型となっています。
対象事業者
従来のIT導入補助金と同様に、中小企業等が対象です。
【対象事業のイメージ】
導入したITツールおよびハードウェアを活用して、生産性向上に取り組む事業が対象になります。この申請型では、ソフトとハードどちらも補助対象になっているため、デジタル化の基盤づくりをすすめることができます。
対象経費
ITツールとハードウェアが対象です。
一例として、以下のようなものがあがっています。
ITツール
◆導入にかかる経費
パッケージ購入費、初期費用(クラウド型の場合等)、システム構築費、導入作業費、役務費(導入支援)
◆利用に係る費用(2年分)
月額、年額サービス利用料、システム保守費用
ハードウェア
機器(本体・付属機器)購入費用、設置費用
昨年の「低感染リスク型ビジネス枠」ではハードウェアのレンタル費が対象でしたが、今回は、購入費用が補助されるという点がポイントです。
補助率・補助額
補助内容は、ITツールとハードウェアで異なります。
ITツール
補助額~50万円以下の場合、補助率3/4
補助額50万円超~350万円の場合、補助率2/3
▼補助率と補助上限額の関係を表したグラフ
出典:サービス等生産性向上IT導入支援事業(IT導入補助金)令和3年度補正予算の概要
大きな金額にならない範囲のITツール導入なら、高い補助率で、手軽に取り組むことができそうです。なお、導入する機能数に応じて、補助上限額が変わる可能性があるということです。
ハードウェア
PC・タブレット:補助額10万円まで(補助率1/2)
レジ・券売機等:補助額20万円まで(補助率1/2)
複数社連携IT導入類型とは
複数の中小・小規模事業者が連携して行うITツールおよびハードウェア導入を支援する型です。
複数社へのITツール導入支援を行うことで、地域DXの実現や、生産性の向上を図る取り組みへの支援を目的としています。効果的に連携するためのコーディネート費や取り組みへの助言を行う外部専門家に係る謝金等も対象経費に含まれています。
対象事業者
事業に参加する事業者の条件は「10者以上」であること等が要件となる見込みです。
- 商工団体等(例)商店街振興組合、商工会議所、商工会、事業協同組合 等
- 当該地域のまちづくり、商業活性化、観光振興等の担い手として事業に取り組むことができる中小企業者または団体(例)まちづくり会社、観光地域づくり法人(DMO)等
- 複数の中小企業・小規模事業者により形成されるコンソーシアム
対象経費
「基盤導入経費」「消費動向等分析経費」「事務費・専門家費」が対象経費となり、例として以下のようなものがあがっています。
(1)基盤導入経費
ITツール:会計ソフト、受発注ソフト、決済ソフト、ECソフト
ハードウェア:PC・タブレット、レジ・券売機等
(2)消費動向等分析経費
ITツール:消費動向分析システム、経営分析システム、需要予測システム、電子地域通貨システム、キャッシュレスシステム、生体認証決済システム 等
ハードウェア:AIカメラ、ビーコン、デジタルサイネージ 等
(3)参画事業者のとりまとめに係る事務費・専門家費
【対象事業のイメージ】
商業集積地等における消費動向等を分析するシステム等を導入して、データ収集・分析による「デジタルマーケティング」を行うことで、来街者増や回遊性向上等を図り、生産性向上につなげる取り組みが対象になりそうです。
サービス等生産性向上IT導入支援事業(IT導入補助金)令和3年度補正予算の概要より抜粋
たとえば、地域にAIカメラを設置し、AIカメラで取得した来街者の回遊性等の分析結果と、各店舗にPOSレジを導入して得た店舗の売れ筋等を比較し、商品構成の見直しなどにつなげる取り組みなどが考えられます。この場合の対象経費例は「ソフトウェア:分析システム導入費」、「ハードウェア:AIカメラ、POSレジ」となります。
補助率・補助上限額
(1)基盤導入経費の補助率は、デジタル化基盤導入類型と同様(1/2~3/4)
(2)消費動向等分析経費:2/3
(3)事務費、専門家費:2/3
1事業あたりの補助上限額は、(1)基盤導入経費と(2)消費動向等分析経費あわせて3,000万円、および事務費・専門家費(((1)+(2))×10%)となります。※合計で、補助額最大3,200万円
まとめ
今回は令和3年補正予算案におけるIT導入補助金の拡充内容についてご紹介しました。
この補助金は、これからインボイス制度対策として、POSレジやシステムの導入をお考えの方が活用しやすい内容となっています。複数社が連携して取り組むITツールおよびハードウェア導入を支援する型も創設されます。
拡充内容については、現在制度設計中のため変更の可能性ありということですが、重要なポイントは、中小企業がインボイス制度に対応しやすくするための拡充、また、地域のデジタルマーケティングを進めて生産性向上につなげるための拡充になるという点でしょう。
賃上げに対応するための生産性向上や、インボイス制度への対策として、ITツール導入・デジタル化推進をお考えの方は、IT導入補助金の活用をご検討ください。
▼1/20から公募開始となった事業再構築補助金の見直し・拡充について
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