令和3年11月26日、政府は「コロナ克服新時代開拓のための経済対策」の各施策を盛り込んだ補正予算を臨時閣議で決定しました。
経済産業省の予算額は、5兆4,290億円で、うち3兆8,594億円が中小企業関係の予算となっています。この補正予算案には中小企業への最大250万円の給付金「事業復活支援金」が盛り込まれており、補助金ではグリーンやデジタル関連の拡充がみられます。そこで、今回は令和3年度補正予算案の中から、経済産業省の中小企業関係予算について詳しくご紹介します。
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この記事の目次
中小企業関係の令和3年度補正予算案
中小企業関係の補正予算案は3兆8,594億円で、大きな割合を占めるのはコロナで売り上げが落ち込んだ事業者への給付金「事業復活支援金」ですが、グリーン・デジタルや賃上げ、インボイス制度導入などに対応して補助率や上限額の引上げが行われる補助金制度にも注目したいところです。
出典:中小企業庁関係 令和3年度補正予算案のポイント
事業復活支援金【2.8兆円】
3月までの見通しを立てられるよう、コロナ禍で大きな影響を受ける事業者を対象に、地域・業種を問わず、固定費負担の支援として5か月分の売上高減少額を基準に算定した額を一括給付する予定です。中堅・中小・小規模事業者、個人事業主(フリーランスを含む)が対象になります。
対象者 | コロナの影響で、2021年11月~2022年3月のいずれかの月の売上高が50%以上または30%~50%減少した事業者 |
開始時期 | 補正予算成立後、所要の準備を経て申請受付開始予定 |
給付額 | 5か月分(11~3月)の売上高減少額を基準に算定 |
給付の上限額は、売上高に応じて3段階にわかれています。売上高30%~50%減少の場合の上限額は、売上高50%以上減少の上限額の6割となります。
令和3年度補正予算案等についてのチラシ(事業復活支援金)より抜粋
事業再構築補助金【6,123億円】
事業再構築補助金では、次の2つの特別枠の創設を予定しています。
◆業況が厳しい事業者や事業再生に取り組む事業者向けの特別枠(最大1,500万円、補助率3/4(中小))
◆グリーン分野での取り組みを重点的に支援する特別枠(売上高減少要件なし、最大1億円、補助率1/2(中小))
また、現行の対象要件(b)「2020年10月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高がコロナ以前と比較して5%以上減少していること」が撤廃されることになりました。そのほか、複数事業者が連携する場合は売上高減少分の合算を可能にするなど、使い勝手の向上を図るとしています。
対象要件 | (1)2020年4月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前と比較して10%以上減少していること (2)事業再構築指針に沿った事業計画を認定経営革新等支援機関と策定すること 等 |
開始時期 | 令和4年以降(補正予算成立後、詳細調整) |
対象経費 | 建物費、機械装置・システム構築費、技術導入費、専門家経費、クラウドサービス利用費、 運搬費、外注費、知的財産権等関連経費、広告宣伝・販売促進費、研修費 |
申請類型ごとの上限額と補助率は以下のとおりです。
出典:令和3年度補正予算案等についてのチラシ(事業再構築補助金)より抜粋
生産性革命推進事業 【2,001億円】
中小企業・小規模事業者の設備投資、IT導入、販路開拓を支援する中小企業生産性革命推進事業について、現行の通常枠の一部見直しを行います。また、グリーン・デジタルや賃上げ等に対応するための特別枠を設け、補助率や上限額を引き上げて、成長投資の加速化と事業環境変化への対応を支援します。
さらに、事業承継・引継ぎ補助金を生産性革命推進事業の枠組みに追加し、中小企業の生産性向上や円滑な事業承継・引継ぎを強力に推進していくとしています。
【各補助事業の内容】
◆ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業(ものづくり補助金)
ものづくり補助金は、革新的製品・サービスの開発、または生産プロセス等の改善に必要な設備投資等を補助する制度です。
赤字など業況が厳しい中でも、賃上げ等に取り組む中小企業向けに特別枠を創設し、優先採択や補助率引き上げを行う予定です。(最大1,250万円、補助率2/3)
また、グリーン・デジタル分野への取り組みに対する特別枠を創設し、補助率や上限額の引き上げを行います。(グリーン枠:最大2,000万円、補助率2/3)(デジタル枠:最大1,250万円、補助率2/3)
出典:令和3年度補正予算案等の事業概要より抜粋
◆小規模事業者持続的発展支援事業(持続化補助金)
持続化補助金は、小規模事業者が経営計画を策定して取り組む販路開拓費等を補助する制度です。
販路開拓等に加えて以下に取り組む事業者の特別枠を新たに設け、補助率や上限額を引き上げて小規模事業者の取り組みを支援します。
・賃上げや事業規模の拡大(成長・分配強化枠)
・後継ぎ候補者が実施する新たな取り組みや創業(新陳代謝枠)
・インボイス発行事業者への転換(インボイス枠)
出典:令和3年度補正予算案等の事業概要より抜粋
◆サービス等生産性向上IT導入支援事業(IT導入補助金)
IT導入補助金は、業務効率化やDXのために導入するITツール等の費用を補助する制度です。
これからインボイス方式への対応も見据えた会計ソフト等の導入を促進するため、補助率の引き上げ、クラウド利用料の2年分の補助、PC等のハード購入補助などを実施し、企業間取引のデジタル化を強力に推進していく考えです。
また、商業集積地・サプライチェーン等で連携した複数の中小・小規模事業者によるITツール・機器の導入を支援するため、複数社連携型IT導入枠を設けてデータ共有・活用などの取り組みも支援していくとしています。
補助対象 | ITツール(会計ソフト、受発注システム、決済ソフト等)、PC、タブレット、レジ等 |
ITツール補助額 | ~50万円(補助率3/4)、50~350万円(補助率2/3) |
PC、タブレット等補助上限 | 10万円(補助率1/2) |
レジ補助上限額 | 20万円(補助率1/2) |
◆事業承継・引継ぎ支援事業(事業承継・引継ぎ補助金)
事業承継・引継ぎ後の設備投資等の新たな取り組みや、事業引継ぎ時の専門家活用費用等を支援する制度で、事業承継・引継ぎに関連する廃業費用等についても支援を行っています。
令和4年度の事業承継・引継ぎ補助金の上限額は150万円~600万円、補助率は1/2~2/3となる見込みです。
資金繰り支援【1,403億円】 ※別途繰越予算あり
次に、資金繰り支援や、商店街等が行う需要喚起イベント等の開催支援(がんばろう!商店街)、中小・小規模事業者を取り巻く環境変化への対応支援の強化などについてご紹介します。
資本性のある劣後ローンが来年度も供給される予定です。併せて、既存予算を活用し、政府系金融機関の実質無利子融資の年度末までの延長、伴走支援型特別保証の来年度までの継続、セーフティネット保証4号(100%保証)の延長を行うとしています。
◆日本政策金融公庫による資本性劣後ローン
対象者 | コロナの影響でキャッシュフローが不足する企業や財務状況悪化のため企業再建等に取り組む企業 |
開始時期 | 受付中(来年度も実施) |
融資上限 | 日本政策金融公庫:(中小)10億円、(国民)7,200万円 |
貸付期間 | 5年1か月、7年、10年、15年、20年 ※元本については期限一括償還 |
◆政府系金融機関による実質無利子・無担保融資
対象者 | コロナの影響で売上減少した中小企業(小規模個人▲5%/小規模法人▲15%/その他▲20%) |
開始時期 | 受付中(期間を今年度末まで延長) |
無利子上限 | 日本政策金融公庫:(中小)3億円、(国民)6,000万円 商工組合中央金庫:3億円 |
無利子期間 | 当初3年間 |
貸付期間 | 運転資金15年以内、設備資金20年以内 |
据置期間 | 最大5年 |
◆伴走支援型特別保証
対象者 | コロナの影響で売上が15%以上減少した中小企業で、金融機関の継続的な伴走支援を受けながら経営改善に取り組む者 |
開始時期 | 受付中(来年度も実施) |
融資上限 | 6,000万円(現在は4,000万円。引上げの準備中) |
保証料 | 原則0.2% |
保証期間 | 最大10年 |
据置期間 | 最大5年 |
◆セーフティネット保証4号(100%保証)
売上高が20%以上減少した中小企業に対し、一般保証枠(2.8億円、80%保証)と別枠のセーフティネット保証4号(2.8億円、100%保証)の期限を延長します。
「がんばろう!商店街」事業 【既存予算で対応】
コロナの感染状況を踏まえて、商店街等が行う需要喚起イベント等の開催を支援します。
この事業では、イベント参加者の感染リスクを低減するため「期間・時間・場所」を分散させる取り組みを優先的に支援するとともに、「ワクチン・検査パッケージ」の導入にかかる費用を補助対象に追加して、補助上限額を引き上げるとしています。
事業環境変化対応型支援事業 【130億円】
コロナ下の環境変化に直面する中小・小規模事業者に対して、中小企業団体等の支援者が、経営者等との対話を通じて経営課題を抽出する等の課題設定型の伴走支援を実施します。
また、最低賃金引き上げやインボイス制度導入等の環境変化への対応が求められる中小・小規模事業者に対し、制度の周知やデジタル化支援・相談等を行う中小企業団体や支援機関等の支援体制を強化に取り組む予定です。
経済産業省 令和3年度補正予算案のポイント
最後に、経済産業省の予算全体における主要事業を確認しておきましょう。
主な事業は以下の7つです。
1.感染症の影響により厳しい状況にある方々の事業や生活・暮らしの支援
2.「ウィズコロナ」下での社会経済活動の再開と次なる危機への備え
3.科学技術立国の実現
4.地方を活性化し、世界とつながる「デジタル田園都市国家構想」
5.経済安全保障(半導体産業基盤緊急強化パッケージ)
6.安心と成長を呼ぶ「人」への投資の強化
7.福島第一原発の廃炉・汚染水・処理水対策、風評対策
補助金に関連する箇所を、それぞれ抜粋してご紹介します。今後の事業活動に取り入れていけるように、実施予定の施策についてご確認ください。
1.感染症の影響により厳しい状況にある方々の事業や生活・暮らしの支援
コロナの影響を受けた方々への支援として事業復活支援金や資金繰り支援のほか、昨今の原油価格の高騰が社会経済活動の再開に水を差さないようにするためのエネルギー価格高騰への対応に900億円が計上されています。
◆コロナ下における燃料油価格激変緩和対策事業 【800億円】
◆省エネルギー投資促進支援事業費補助金 【100億円】
省エネ設備(高効率な空調・ボイラー・給湯・冷凍冷蔵設備等)の導入によって既存設備を更新する製造業・サービス業等の事業者に対して、当該設備費の掛かり増し経費を定額で補助するとしています。
省エネルギー投資促進支援事業費補助金についてはこちらの記事もご参照ください。
2.「ウィズコロナ」下での社会経済活動の再開と次なる危機への備え
安全・安心を確保した社会経済活動の再開のため、コロナの影響を受けたコンテンツ関連事業者が行う顧客体験の向上や収益チャネルの新規確保といった収益基盤の強化の取り組みを補助する、コンテンツ海外展開促進・基盤強化事業(J-LOD)に557億円を計上しています。イベントを中止した際のキャンセル費用等補助では、補助率1/2~10/10、上限2,500万円から5,000万円に引き上げを計画しています。
3.科学技術立国の実現
科学技術立国の実現におけるクリーンエネルギー戦略のなかで、自動車の電動化の推進に1,375億円を計上し、以下に取り組むとしています。
◆蓄電池の国内製造基盤の確保のための先端生産技術導入・開発促進事業【1,000億円】
先端的な蓄電池・材料の生産・リサイクル技術を用いた大規模製造拠点を国内に立地する事業者に対して、建物・設備や、生産技術等に関する研究開発の費用を補助します(設備の補助率 1/3以内、研究開発の補助率は1/2以内。ただし、全体で設備投資総額の1/2以内)。
◆クリーンエネルギー自動車・インフラ導入促進補助金等 【375億円】
電気自動車、燃料電池自動車、プラグインハイブリッド自動車の購入費用補助のほか、充電設備の購入費及び工事費の補助(例えば集合住宅の場合、購入費1/2、工事費定額)、水素ステーションの整備費及び運営費の最大2/3の補助などに取り組むとしています。
このほか、再生可能エネルギーの大量導入に向け、再エネの出力変動に対応する調整力の供出や余剰電力の吸収が可能となる系統用蓄電池や水電解装置を導入する事業者に対して、設備の種類・規模に応じて導入費用の1/3~2/3を補助する再エネ導入加速化の事業に130億円が計上されています。
4.地方を活性化し、世界とつながる「デジタル田園都市国家構想」
◆データセンターの地方拠点整備 【71億円】
レジリエンスの確保等の観点から、東京圏以外におけるデータセンターの新規拠点を整備するため、データセンター事業者等に対して、地方での新規拠点整備に必要となる電力・通信インフラ整備等に係る準備費用の1/2を補助する取り組みを行います。
5.経済安全保障(半導体産業基盤緊急強化パッケージ)
◆先端半導体生産基盤整備基金 【6,170億円】
5G情報通信システムの構築に不可欠な先端半導体に係る生産基盤を整備するため、5G促進法に基づく認定を受けた先端半導体の生産基盤整備計画の実施に必要な資金の最大1/2を補助するとしています。
◆サプライチェーン上不可欠性の高い半導体の生産設備の脱炭素化・刷新事業 【470億円】
需給逼迫による国民生活や経済活動への影響が大きく、安定供給の必要性が高い半導体(マイコン、アナログ、パワー等半導体)の製造設備の入替・増設費等の1/3を補助する(上限150億円)取り組みを行います。
6.安心と成長を呼ぶ「人」への投資の強化
◆新たな学び直し・キャリアパス促進事業 【9億円】
大企業等に所属する人材が、副業・転職・出向等により、中小企業・スタートアップへ経営参画する場合等における事業費・人件費等の費用の補助(2/3)や、企業が大学・高専等において共同講座や人材育成に資するコース・学科等を設置する費用の1/2を補助する取り組みを行います。
◆学びと社会の連携促進事業(EdTech導入補助金)【20億円】
EdTechサービスを行う事業者が、学習スタイルの転換を進めたい学校等への試験導入を行う際の費用の最大1/2を補助する取り組みに予算を計上しています。
7.福島第一原発の廃炉・汚染水・処理水対策、風評対策
◆福島第一原発の廃炉・汚染水・処理水対策 【176 億円】
東京電力福島第一原子力発電所における燃料デブリの取り出しや収納・移送・保管、放射性廃棄物の処理など、技術的に難易度が高く、国が前面に立って取り組む必要のある研究開発等について、民間事業者等の取り組みを補助するとしています(定額または1/2以下)。
まとめ
今回は経済産業省の令和3年度補正予算案について、中小企業対策を中心にご紹介しました。
新しい経済対策で大きな注目を浴びているのは、コロナで売上減少する事業者を支援する「事業復活支援金」で、固定費負担の支援として5か月分(11~3月)の支援金が一括給付される予定です。また補助金制度としては事業再構築補助金、ものづくり補助金、持続化補助金、IT導入補助金の拡充が予定されており、どの程度使いやすい制度になるのか注目されます。たとえば、持続化補助金では業況が厳しい中で賃上げ等に取り組む場合やインボイス発行事業者に転換する場合の特別枠ができ、IT導入補助金では補助率の引き上げやPCなどのハードが対象に含まれるなど、補助金活用の幅が広がることが考えられます。
今回の経済対策を活用した経営回復、事業環境整備を検討するにあたり「最低賃金引き上げやインボイスの対応に役立つ補助金の準備をしておきたい方」や「成長投資であるデジタルやグリーンに補助金を活用して取り組む計画を策定したい方」は、お気軽に補助金ポータルまでお問い合わせください。
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