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令和5年度補正予算 農林水産業を支える8182億円の展開

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日本の農林水産業が直面する多くの課題に対応するため、令和5年度補正予算が策定されました。総額8182億円というこの巨額の予算は、食の安全保障の強化、価格上昇の影響緩和、そして総合的なTPP政策大綱に沿った措置への投資を目指しています。

今回はこの令和5年度補正予算の中身についてみていきたいと思います。農林水産業に関わる方の今後の事業展開の参考としていただければと思います。

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この記事の目次

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令和5年度農林水産省補正予算案の概要

以下の表は、令和5年度の農林水産関係補正予算の主な項目と予算額をまとめたものです。これらは、日本の食料安全保障の強化、生産資材の国内転換、環境対策、農業者の支援など、多岐にわたる施策に割り当てられています。

分野 事業名 予算額(億円)
食料安全保障の強化 畑作物の本作化対策
(畑地化促進事業)
(畑作物産地形成促進事業)
(国産小麦・大豆供給力強化総合対策)
(国産シェア拡大対策(麦・大豆枠))
1577
(750)
(180)
(50)
(80  等)
米粉の利用拡大支援対策 20
肥料の国産化・安定供給確保対策 68
生産資材の使用低減対策 32
米粉の利用拡大支援対策 20
肥料の国産化・安定供給確保対策 68
省エネ技術の導入加速化対策 40
果樹産地における花粉確保対策 5
飼料自給率向上緊急対策 130
燃油・資材の森林由来資源への転換等対策 20
養殖業体質強化緊急総合対策 9
グローバル産地生産流通基盤強化緊急対策 74
リスクマネー緊急対策事業 10
食肉流通構造高度化・輸出拡大事業 71
生産基盤の構造転換 担い手確保・経営強化支援事業 23
農業支援サービス事業緊急拡大支援対策 10
スマート農業技術に対応する品種の開発 5
スマート水産業推進緊急事業 1
省力化に対応した基盤の整備・保全 460
国民の食料安全保障 食料・生産資材等の安定的なサプライチェーンの確保 1
野菜種子の安定供給体制の強化 2
適正な価格形成と国民理解の醸成 5
地域の食品アクセスの確保に向けた環境整備と食品ロス削減 5
物価高騰の影響緩和 施設園芸等燃料価格高騰対策 45
漁業経営セーフティーネット構築事業 366
収入保険制度の実施 37
金融支援対策 100
和牛肉需要拡大 50

畑作物の本作化対策の全貌

令和5年度の補正予算の畑作物の本作化対策は、水田を利用して麦や大豆など国内で需要が高まっている作物の生産拡大を目指すもので、総額1577億円が投じられています。

  • 国産小麦・大豆供給力強化総合対策として、50億円を配分。
  • 麦・大豆の国産シェア拡大を目的に、生産技術の導入や流通モデルづくりなどに80億円を投資。
  • 加工・業務用野菜などの国産シェア拡大を目指し、サプライチェーン強化に25億円。
  • てん菜など他作物からの転換を含む持続的畑作生産体制の確立に32億円を割り当て。
  • 小麦、大豆の生産量を拡大(小麦は108万t、大豆は34万tを令和12年度までに目標)。
  • 畑地化促進事業(750億円): 水田を畑地に変換し、畑作物の定着を支援。
  • 畑作物産地形成促進事業(180億円): 低コスト生産技術の導入や畑作物導入の取り組みを支援。
  • 農業農村整備事業(460億円): 水田の汎用化・畑地化等の基盤整備を強化。

農業者は営農計画書や交付申請書を取りまとめ、農業再生協議会を通じて国へ申請し、交付された支援をもとに、農業者は畑作物の生産に着手します。

これらの施策は、国産食料の自給率向上と農業生産基盤の強化を目指し、日本の食料安全保障を支える重要な柱の一つとなっています。持続可能な農業の確立に向けた政府の方向性が示された対策であり、今後の農業の動向が注目されます。

米粉利用拡大支援とは

補正予算では、国内で自給可能な唯一の穀物である米を使用した米粉の利用拡大に向けた支援に20億円の予算が割り当てられ、消費・流通・生産の各段階での取り組みが集中的に支援される予定です。支援内容は主に以下の3つです。

1.米粉商品開発等に対する支援

  • 米粉を活用した新商品開発
  • 新商品の製造・販売に必要な機械の開発・導入

2.米・米粉消費拡大に向けた支援

  • 国内自給可能な米・米粉製品の利用拡大に向けた情報発信

3.米粉製品製造能力強化等に対する支援

  • 製粉企業・食品製造事業者の施設整備
  • 製造ラインの増設

政府は民間団体と連携し、製粉企業や食品製造事業者が、米粉の特徴を活かした商品開発、新商品の広告宣伝費用、および米粉の普及に必要な製粉工場や製造機械の整備に対して、必要な費用の一部を支援する体制を取ります。

この取り組みにより、米粉を利用したパンや麺類などの新しい食品開発が進められます。国産米を使用した米粉は、食物アレルギーが懸念される小麦粉の代替品としての利点を持つことから、国産米粉の普及が消費者にとっての選択肢を広げ、国内食品産業に新たな活路を開く可能性を秘めています。

加工・業務用野菜の生産拡大に向けた新戦略

加工・業務用野菜の国内生産拡大に向け、令和5年度の補正予算では25億円を投じています。この対策は、国産野菜の利用を促進し、強靱なサプライチェーンの構築を目指しています。具体的には、産地から実需者までをつなぐ流通体制の合理化、生産体制の効率化、そして消費拡大を図るための支援が行われます。

  • 産地、流通、実需が一体となった強靱なサプライチェーン構築を目指す。
  • 加工・業務用野菜の出荷量を98万トンから145万トンに拡大することを目標とする。

1.産地育成推進:実需者ニーズに応じた品種の栽培実証支援。
2.流通体制合理化:集出荷貯蔵施設の改良やパレタイザーの導入支援。
3.野菜加工施設整備:冷凍加工施設やカット加工施設の整備支援。
4.需要拡大:産地と実需等のマッチング、シンポジウム、消費喚起活動の全国的取り組み支援。

支援は、都道府県など通じて行われ、農業者や組織が経費の半分以内を負担します。産地の強化、流通の強化、実需の強化の三つの柱で進めて行きます。

この取り組みにより、国内での加工・業務用野菜の生産が活性化され、輸入依存度の高い現状からの脱却と、国産野菜の市場シェアの回復を目指します。サプライチェーンの充実は、将来的な食料安全保障の確立にも寄与し、国産野菜が持つ「安心・安全」のブランド価値を高めることが期待されます。

食品産業における安定した原材料調達への新たな一歩

食品事業者が直面する原材料調達の安定化に向けた対策にも注目が集まります。全体で45億円の予算が割り当てられ、ウクライナ情勢の影響を受ける輸入食品原材料の価格高騰や、国際的な食料需要の増加、為替変動などの調達リスクへの対応が求められる中、食品製造事業者等のサポートが強化されます。

1.食品原材料調達リスク軽減対策事業(44億円)

  • 原材料切替えや新商品開発に伴う機械・設備導入の支援。
  • 産地との連携強化による安定調達体制の構築。

2.農林水産業と食品産業の連携強化・拡大支援事業(1億円)

  • 地域の農林漁業者や食品事業者が連携し、新商品開発を行う際の支援。

支援事業は民間団体を通じて行われ、食品製造事業者等は経費の一部を自己負担します。この支援により、食品事業者は産地との連携強化や原材料調達先の多角化を図り、外部環境の変化に強いサプライチェーンの構築を目指します。これには、原材料の安定供給を確保することはもちろん、新商品開発や市場拡大への動きが加速されることが期待されます。

国産鶏卵の安定供給へ向けた対策

鳥インフルエンザの発生など緊急時における鶏卵不足への対応としては、22億円が緊急時鶏卵安定供給対策に割り当てられました。この予算は、主に長期保存が可能な粉卵の製造施設整備を中心に、国内での供給体制を強化するための取り組みに使用されます。

  • コンソーシアムの推進には100万円、その他施設整備には21億9,900万円が配分
  • コンソーシアムでは、鶏卵生産者と加工業者が連携し、一時的な供給不足に強いサプライチェーンを構築
  • 施設整備では、長期保存可能な粉卵製造施設の整備を通じて、輸入中心から国産粉卵への置換を含めた供給量の増加を目指す

この事業により、外食産業や加工食品業界での鶏卵使用が拡大され、緊急時にも鶏卵不足というリスクに強い国内食料供給システムの確立が期待されます。

まとめ

令和5年度補正予算では、日本の農林水産業に8182億円が投じられ、食の安全保障の強化や価格上昇の緩和、TPP政策への対応が図られています。畑作物の本作化対策には1577億円が割り当てられ、米粉の利用拡大や加工・業務用野菜の生産拡大にも注力され、これらは国産食料の自給率向上と農業生産基盤の強化を目的としています。

今回ご紹介したのは補助事業の一部ですので、さらに事業ごとの詳細をご確認されたい方は以下を参考にしてみてください。

1.畑作物の本作化対策<一部公共>(PDF:1,279KB)

2.米粉の利用拡大支援対策事業(PDF:461KB)

3.加工・業務用野菜の生産拡大対策 産地生産基盤パワーアップ事業のうち国産シェア拡大対策(園芸作物等)(PDF:488KB)

4.食品事業者における原材料の調達安定化対策(PDF:554KB)

5.緊急時鶏卵安定供給対策(PDF:625KB)

6.肥料の国産化・安定供給確保対策(PDF:891KB)

7.生産資材の使用低減対策(PDF:568KB)

8.省エネ技術の導入加速化対策(PDF:450KB)

9.果樹産地における花粉確保対策(PDF:763KB)

10.飼料自給率向上緊急対策(PDF:541KB)

11.燃油・資材の森林由来資源への転換等対策(PDF:546KB)

12.養殖業体質強化緊急総合対策事業(PDF:536KB)

13.担い手確保・経営強化支援事業(PDF:406KB)

14.食料安全保障強化に向けた革新的新品種開発プロジェクト(PDF:580KB)

15.農業支援サービス事業緊急拡大支援対策(PDF:427KB)

16.スマート水産業推進緊急事業(PDF:356KB)

17.食料・生産資材等の安定的なサプライチェーンの確保に向けた投資可能性調査緊急支援事業(PDF:371KB)

18.野菜種子安定供給緊急対策事業(PDF:470KB)

19.適正な価格形成と国民理解の醸成(PDF:547KB)

20.地域の食品アクセスの確保に向けた環境整備と食品ロス削減等(PDF:746KB)

21.施設園芸等燃料価格高騰対策事業(PDF:545KB)

22.漁業経営セーフティーネット構築事業(PDF:703KB)

23.収入保険制度の実施(PDF:347KB)

24.物価高騰等の影響緩和に係る金融支援対策(PDF:343KB)

25.和牛肉需要拡大緊急対策事業(PDF:604KB)

26.2030年輸出5兆円目標の実現に向けた農林水産物・食品の輸出促進(PDF:2,017KB)

27.産地生産基盤パワーアップ事業(PDF:528KB)

28.加工施設再編等緊急対策事業(PDF:390KB)

29.みどりの食料システム戦略緊急対策事業(PDF:512KB)

30.水田の汎用化・畑地化、畑地・樹園地の高機能化等の推進<公共>(PDF:515KB)

31.畜産クラスターによる生産基盤の維持・強化(PDF:606KB)

32.国産チーズの競争力強化対策(PDF:548KB)

33.乳用牛長命連産性等向上緊急支援事業(PDF:482KB)

34.畜産クラスターを後押しする草地整備の推進<公共>(PDF:639KB)

35.新規就農者確保緊急円滑化対策(PDF:565KB)

36.林業の担い手の育成・確保(林業従事者等確保緊急支援対策)(PDF:475KB)

37.漁業担い手確保緊急支援事業(PDF:383KB)

38.農地の更なる大区画化・汎用化の推進<公共>(PDF:657KB)

39.スマート農業等先端技術の開発・社会実装促進対策(PDF:502KB)

40.スマート農業技術開発加速化に向けた農研機構の機能強化対策(PDF:531KB)

41.中山間地域等対策(PDF:956KB)

42.鳥獣被害防止総合対策(PDF:586KB)

43.林業・木材産業国際競争力強化総合対策<一部公共>(PDF:587KB)

44.水産業競争力強化緊急事業(PDF:483KB)

45.高温対策栽培体系への転換支援(PDF:593KB)

46.甘味資源作物産地生産体制強化緊急対策事業(PDF:475KB)

47.国産畜産物利用安定化対策事業(PDF:454KB)

48.農地中間管理機構による農地集約化等の加速(PDF:367KB)

49.働きやすい環境づくり緊急対策(PDF:440KB)

50.家畜伝染病・家畜衛生対策(PDF:726KB)

51.重要病害虫の侵入・まん延防止(PDF:483KB)

52.花粉症解決に向けた緊急総合対策<一部公共>(PDF:627KB)

53.漁業収入安定対策事業(PDF:374KB)

54.韓国・中国等外国漁船操業対策(PDF:482KB)

55.沖縄外国漁船操業対策等(PDF:442KB)

56.北海道赤潮対策緊急支援事業(PDF:392KB)

57.海洋環境の変化に対応した養殖生産構造改革事業(PDF:440KB)

58.物流2024年問題への対応(PDF:1,336KB)

59.ムーンショット型農林水産研究開発事業(PDF:562KB)

60.農業水利施設、ため池等の防災・減災対策<公共>(PDF:750KB)

61.治山施設の設置等による防災・減災対策<公共>(PDF:819KB)

62.森林整備による防災・減災対策<公共>(PDF:498KB)

63.漁業地域における防災・減災対策<公共>(PDF:461KB)

64.海岸堤防等の防災・減災対策<公共>(PDF:563KB)

65.卸売市場施設の防災・減災対策(PDF:593KB)

66.園芸産地における事業継続強化対策(PDF:552KB)

67.災害復旧等事業<公共>(PDF:775KB)

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