ウクライナ情勢の長期化、円安などの理由で加速する物価高の中、7月1日(金)に、事業再構築補助金の第7回公募が開始しました。
事業再構築補助金は、当面の需要や売り上げの回復が期待しづらい中で、事業転換等を行って経済社会の変化に対応しようとする中小企業等を支援する補助金です。第7回公募から、原油価格・物価価格高騰等の経済環境の変化の影響を受けている事業者を対象とした特別枠ができました。
今回はこれまでの採択結果の確認と、第7回公募に応募するなら知っておきたいポイントをご紹介します!
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この記事の目次
事業再構築補助金採択結果
第6回公募は、6月30日に締め切られたばかりで、8月下旬~9月上旬頃に採択発表の予定です。まずは第5回公募の結果についてみてみましょう。
第5回公募の応募件数は21,035件で、採択件数9,707件、全体の採択率46.1%となりました。
出典:事業再構築補助金第5回公募の結果について
これまでの申請類型ごとの採択率は以下のとおりです。
【通常枠】
第1回:30.1%
第2回:36.3%
第3回:37.0%
第4回:37.9%
第5回:39.6%
【卒業枠】
第1回:56.3%
第2回:50.0%
第3回:45.5%
第4回:47.1%
第5回:42.8%
<第5回で終了>
【緊急事態宣言特別枠】
第1回:55.3%
第2回:66.6%
第3回:66.7%
第4回:66.5%
第5回:66.6%
<第5回で終了>
【最低賃金枠】
第1回:ー
第2回:ー
第3回:80.0%
第4回:74.2%
第5回:79.4%
【大規模賃金引き上げ枠】
第1回:ー
第2回:ー
第3回:60.0%
第4回:50.0%
第5回:61.5%
第3回公募からはじまった最低賃金枠と大規模賃金引き上げ枠は採択率が高めで、特に最低賃金枠は7~8割の採択率をキープしています。一方、通常枠は、第5回の採択率がこれまでで一番高い39.6%だったとはいえ、他の枠と比べると低い数値です。特別枠で不採択の場合は、基本的に通常枠での再審査となるので、今後も通常枠での申請は厳しいものになると考えられます。
事業再構築補助金の6つの申請類型
第5回で「卒業枠」と「緊急事態宣言特別枠」が終了し、代わりに第6回から「回復・再生応援枠」と「グリーン成長枠」が加わりました。
回復・再生応援枠の概要 |
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・引き続き業況が厳しい事業者や事業再生に取り組む事業者を対象とした枠 ・補助金の上限額は1,500万円(従業員数による) ・中小企業者等:補助率3/4 (通常枠の補助率2/3に対して引き上げられている) ・中堅企業等:補助率2/3 (通常枠の補助率1/2に対して引き上げられている) ・事業再構築指針の要件について、「主要な設備の変更」が求められない |
グリーン成長枠の概要 |
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・グリーン分野(原子力、水素など)での事業再構築を通じて高い成長を目指す事業者を対象とした枠 ・補助金の上限額は1億円(中堅企業等は1.5億円) ・補助率は、中小企業者等 1/2、 中堅企業等 1/3 ・売上高10%減少要件が課されないため、創業間もない事業者も申請可能 ・不採択となった際に通常枠での再審査を希望する場合は、売上高等減少要件を満たす書類を提出する必要がある ・過去の公募で採択された事業者でも2回目の支援を受ける事が可能 |
第7回では、さらに「原油価格・物価高騰等緊急対策枠(以下、緊急対策枠)」が加わります。これにより事業再構築補助金の申請類型は以下の6つになりました。
1.通常枠 |
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補助金額 中小企業者等、中堅企業等ともに 【従業員数20人以下】100万円~2,000万円 【従業員数21~50人】100万円~4,000万円 【従業員数51~100人】100万円~6,000万円 【従業員数101人以上】100万円~8,000万円 補助率 中小企業者等 2/3 (6,000万円を超える部分は1/2) 中堅企業等 1/2 (4,000万円を超える部分は1/3) |
2.大規模賃金引上枠 |
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補助金額 中小企業者等、中堅企業等ともに 【従業員数101人以上】8,000万円超~1億円 補助率 中小企業者等 2/3 (6,000万円を超える部分は1/2) 中堅企業等 1/2 (4,000万円を超える部分は1/3) |
3.回復・再生応援枠 |
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補助金額 中小企業者等、中堅企業等ともに 【従業員数5人以下】100 万円 ~ 500万円 【従業員数6~20 人】100 万円 ~ 1,000万円 【従業員数21人以上】100万円 ~ 1,500万円 補助率 中小企業者等 3/4 中堅企業等 2/3 |
4.最低賃金枠 |
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補助金額 中小企業者等、中堅企業等ともに 【従業員数5人以下】100 万円 ~ 500万円 【従業員数6~20 人】100 万円 ~ 1,000万円 【従業員数21人以上】100万円 ~ 1,500万円 補助率 中小企業者等 3/4 中堅企業等 2/3 |
5.グリーン成長枠 |
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補助金額 中小企業者等:100万円~1億円 中堅企業等:100万円~1.5億円 補助率 中小企業者等 1/2 中堅企業等 1/3 |
6.緊急対策枠 |
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補助金額 中小企業等、中堅企業等ともに 【従業員5人以下】100万円~1,000万円 【従業員6~20人】100万円~2,000万円 【従業員21~50人】100万円~3,000万円 【従業員51人以上】100万円~4,000万円 補助率 中小企業等 3/4(※1) 中堅企業等 2/3(※2) 以下の部分は補助率が異なります。 (※1)従業員数5人以下の場合500万円を超える部分、従業員数6~20人の場合1,000万円を超える部分、従業員数21人以上の場合1,500万円を超える部分は2/3) (※2)従業員数5人以下の場合500万円を超える部分、従業員数6~20人の場合1,000万円を超える部分、従業員数21人以上の場合1,500万円を超える部分は1/2) |
緊急対策枠は、「回復・再生応援枠」と「最低賃金枠」の補助金額以上の支援がうけられますが、上記※印の部分(はみ出た部分)の補助率は下がります。
緊急対策枠について
新設の緊急対策枠は、原油価格・物価高騰等の、予期せぬ経済環境の変化の影響を受けている中小企業等の事業再構築を支援する枠で、補助対象事業の要件は以下のとおりです。
緊急対策枠 | ①事業再構築指針に示す「事業再構築」の定義に該当する事業であること。 ②足許で原油価格・物価高騰等の経済環境の変化の影響を受けたことにより、2022年1月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高(または付加価値額)が、2019年~2021年の同3か月の合計売上高と比較して10%以上(付加価値額の場合は15%以上)減少していること。また、コロナによって影響を受けていること。 ③事業計画を認定経営革新等支援機関と策定すること。補助金額が 3,000 万円を超える案件は認定経営革新等支援機関及び金融機関と策定していること。(金融機関が認定経営革新等支援機関であれば当該金融機関のみでも可) ④補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均 3.0%以上増加、または従業員一人当たり付加価値額の年率平均 3.0%以上増加する見込みの事業計画を策定すること。 |
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通常枠等の場合、コロナ前の売上高を要件の確認に用いるため2021年以降に創業した事業者は補助対象になりませんが、緊急対策枠では、2022年と2021年の売上高を比較して緊急対策要件を満たす場合は補助対象になる可能性があります。ただし、緊急対策枠で不採択となった際に通常枠での再審査を希望する場合は、売上高等減少要件を満たすことを示す書類を提出する必要があります。
緊急対策枠の助事業実施期間は、通常枠等と同様に、交付決定日から12か月以内(採択発表日から14か月後の日まで)となっています。それまでに、契約・発注、納入、検収、支払及び実績報告書の提出等のすべての手続きが完了することが必要です。
第1~5回の採択結果から、通常枠と比べて最低賃金枠などの特別枠の採択率が高いことがわかっており、今回の緊急対策枠も原油価格・物価高騰への対応として高めの採択率になるのではないかと推察されます。これらの枠で不採択の場合でも通常枠で再審査されるので、要件に合うなら、まずは通常枠以外で申請を検討されるのが良いでしょう。
▼緊急対策枠とその他の枠の申請要件の詳細は、こちらの記事をご参照ください。
事業再構築補助金の加点項目
ここでは「加点項目」について、簡単にご紹介します。
(1)『大きく売上が減少しており業況が厳しい事業者に対する加点』
2021年10月以降のいずれかの月の売上高が対2020年または2019年同月比で30%以上減少していること。(売上高の減少に代えて、付加価値額の45%減少でも可)
(2)『最低賃金枠申請事業者に対する加点』
指定の要件を満たし、最低賃金枠に申請すること。
(3)『経済産業省が行うEBPMの取り組みへの協力に対する加点』
近年、効果的な事業を実施していくために、エビデンスに基づく政策形成(Evidence‐based policy making=EBPM)が推進されており、データに基づく政策効果検証・事業改善を進める観点から、経済産業省が行うEBPMの取り組みに対して、採否に関わらず、継続的な情報提供が見込まれるものであるかどうか。
(4)『パートナーシップ構築宣言を行っている事業者に対する加点』
応募締切日時点で「パートナーシップ構築宣言」ポータルサイトで宣言を公表している事業者。大規模賃金引上枠、グリーン成長枠が対象。
(5)『事業再生を行う者(再生事業者)に対する加点』
中小企業活性化協議会等から支援を受けており、応募申請時に再生計画等を「策定中」または「策定済」かつ2019年7月1日以降に再生計画等が成立等した者。
(6)『特定事業者であり、中小企業者でない者に対する加点』
資本金の額または出資の総額が10億円未満の「特定事業者」等。
(7)『サプライチェーン加点』
複数の事業者が連携して事業に取り組む場合、同じサプライチェーンに属する事業者が「直近1年間の連携体の取引関係が分かる書類について、決算書や売上台帳などの証憑とともに提出する」等の要件を満たし、連携して申請すること。
(8)『足許で原油価格・物価高騰等の経済環境の変化の影響を受けている事業者に対する加点』
原油価格・物価高騰等の経済環境の変化の影響により、2022年1月以降のいずれかの月の売上高(または付加価値額)が、2019年~2021年同月と比較して10%(付加価値額の場合15%)以上減少していること。
(1)、(5)、(7)、(8)の加点項目は根拠となる添付書類を提出し、各要件に合致することが確認できた場合にのみ加点されます。
第7回公募のスケジュール
公募期間:2022年7月1日~9月30日
申請受付は8月下旬に開始予定で、採択発表は11月下旬~12月上旬頃を予定しています。
緊急対策枠の対象例
どのような事業再構築が緊急対策枠の対象となるのか、例を確認しておきましょう。
例:資源高による影響の場合…【フライ菓子などの製造販売業者】 |
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コロナの影響による実店舗への客足減少に加え、原材料となる小麦粉、油などの価格が高騰し、売上・利益率が減少。 ↓ 既存の加工技術を活かし、新たにドライフルーツの製品を製造する機器を導入。原油価格・物価高騰の影響を受ける体制から脱却し新しい市場の開拓を目指す。 |
例:直接的・間接的な輸出入の影響…【明太子を製造・販売する事業者】 |
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コロナの影響で飲食店向け販売量が減少していることに加え、原料であるタラの卵はロシア産が多く、製造量が縮小し売上減少。 ↓ 既存の加工技術を活かし、国内産の水産物を用いた新たな製品を製造する工場を新設。輸出入の影響を受ける体制から脱却し、既存の販売経路に加え、EC販売も駆使して感染症等に強い事業の展開を図る。 |
参考:コロナ禍における「原油価格・物価高騰等総合緊急対策」に関して
このように、経済環境の変化の影響の例として、資源高による影響、直接的・間接的な輸出入の影響が示されています。ほかに海外送金や現地駐在などの諸問題による影響なども考えられます。緊急対策枠では、現在、原油価格・物価高騰等の経済環境の変化の影響を受けている事業者の事業再構築を幅広く支援するとしています。
まとめ
現在、中小企業等はコロナ禍だけでなく、ウクライナ情勢の緊迫化等による原油や物価高騰等に伴い、更なる経済環境の悪化に直面しています。それを踏まえて、第7回公募では特別枠の創設や加点措置により、コロナの影響を受けつつ、原油価格・物価高騰等により業況が厳しい中小企業等への支援を行うとしています。
既存事業における売上の減少が著しいなどの深刻な被害が生じていて、事業再構築を行う必要性が高い事業者の方は、本補助金を活用して、経済社会の変化に対応した、感染症等の危機に強い事業への再構築に取り組んでみてはいかがでしょうか。
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