令和5年度の予算編成では、コロナ禍・物価上昇などへの対応を進めるとともに、内外の厳しい環境変化を踏まえて、持続的に発展する経済社会を実現するための施策を展開することが重要になります。
今回、経済産業省は、次の3つを重点に概算要求をまとめました。
1.コロナ禍・ウクライナ情勢による資源・物資の供給制約及び物価上昇など現下の経済状況に対する適確な対応
2.持続的な成長を可能とする経済社会の実現
3.廃炉・汚染水・処理水対策/福島の復興を着実に進める
「中小企業対策はどうなっているのか?」
「来年度の省エネ補助金は?」
さっそく、概算要求から、そのヒントを探してみましょう。
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この記事の目次
令和5年度の要求額
経済産業省の令和5年度概算要求額は1兆3,914億円で、前年度当初予算の1兆2,234億円から13.7%の増加となりました。(うち、一般会計は対前年比で19.2%増、エネルギー対策特別会計は15.2%増)
中小企業対策費としては、対前年度比22.6%増の1,343億円を計上しました。
また、以下の項目については、経済産業政策の重点に関連する重要政策として、金額を示さない「事項要求」を行って予算編成の過程で検討するとしています。
- GX(グリーントランスフォーメーション)の促進
- 長期化するコロナ禍・物価高騰等の環境下にある中小企業・人材等に必要な支援
- 大阪・関西万博の会場整備に関する施策
- 長期に亘る ALPS 処理水の海洋放出に伴う水産業における影響を乗り越えるための施策
中小企業・小規模事業者・地域経済関係 概算要求等ポイント
中小企業対策の方向性として、まず「厳しい経営環境に置かれている中小企業・小規模事業者等に対する資金繰り支援や価格転嫁対策等に万全を期す」ことが示されています。
その一方で、成長と分配の好循環を実現するために必要な「成長志向の中小企業・小規模事業者の創出」に向けて、挑戦・自己変革を後押しするための予算・税等の政策措置を総動員していくということも示しています。
では具体的な取り組み内容についてみていきましょう。
参考・出典:令和5年度 中小企業・小規模事業者・地域経済関係 概算要求等ポイント
1.コロナ長期化・原材料価格高騰等の危機への対応
足元の業況が厳しい中小企業・小規模事業者等の事業継続を、資金繰り支援等を通じて支援します。また、「転嫁円滑化施策パッケージ」の着実な実施により価格転嫁・取引適正化を実現し、持続的な賃上げの原資となる収益の確保を目指します。
※以下、【 】は予算額です。令和5年度概算要求額に続いて、( )に令和4年度当初予算額を記載しています。
資金繰り支援 | |
日本政策金融公庫補給金【151.1億円(145.5億円)】 | 日本政策金融公庫からの融資の金利を引下げるため、利子補給を実施。 |
中小企業信用補完制度関連補助・出資事業【67.7億円(49.8億円)】 | 信用保証制度等を通じた資金繰り支援を実施。スタートアップ創出のため、経営者保証なしのメニューを新設。 |
価格転嫁対策 | |
「価格交渉促進月間」(9月・3月)の実施や、下請振興法に基づく「指導・助言」、下請Gメンによるヒアリング、「パートナーシップ構築宣言」の参加企業数の増加・実効性の向上 | 価格交渉促進月間や、下請Gメン等による取引実態の把握、下請法の厳正な執行、下請かけこみ寺での相談対応等を実施。 |
中小企業取引対策事業【27.9億円(21.3億円)】 |
2.創業・事業承継を通じた挑戦・自己変革の推進
創業・事業承継・引継ぎ(M&A)という、転換点を契機に新たな取組に挑戦する自己変革への意欲が高い企業への支援を強化します。以下の取り組みを実施し、創業・事業承継を円滑に実施するための環境を整備します。
①創業時の借入時における経営者保証を不要とする保証制度創設
②中小企業・小規模事業者の後継者同士のネットワークの創出
③事業承継に係る手厚いサポート体制の構築等
「成長志向の中小企業・小規模事業者」の創出 | |
後継者支援ネットワーク事業【4.0億円(新規)】 | 後継者同士の切磋琢磨できる場を創出し、家業を活かした新規事業アイデアを競うイベントを開催。 |
中小企業活性化・事業承継総合支援事業【225.0億円(157.7億円)】 | 中小企業活性化協議会による事業再生支援、事業承継・引継ぎ支援センターによる円滑な事業承継・引継ぎ支援等を実施。 |
事業承継・引継ぎ支援事業【20.0億円(16.3億円)】 | 事業承継・引継ぎ(M&A) 後の経営革新やM&A時の専門家活用、事業承継・M&Aに伴う廃業に係る費用等を支援。 |
3.成長分野等への挑戦に向けた投資の促進
生産性向上・再構築等に向けた設備投資を積極的に行う中小企業・小規模事業者等を後押しするとともに、海外展開等の新たな市場獲得についても支援します。
デジタル化・生産性向上 | |
中小企業生産性革命推進事業(令和3年度補正:2,000.6億円) | 設備投資、IT導入、販路開拓等への補助を通じ、中小企業・小規模事業者の生産性向上等に向けた取組を支援。 |
地域未来DX投資促進事業【34.9億円(15.9億円)】 | 地域企業のDX実現に向け、産学官金が参画する支援コミュニティの支援活動や新事業の創出に向けた実証事業等を支援。 |
海外展開・新分野開拓・事業再構築 | |
ものづくり等高度連携・事業再構築促進事業【10.6億円(10.2億円)】 | 複数の中小企業等が連携して行う、新たな付加価値創造を図る製品・サービスの開発や事業再構築等の取組を支援。 |
事業再構築補助金(令和3年度補正+令和4年度予備費:7,123.0億円) | 新型コロナの影響を大きく受けながらも新分野展開、業態転換等の事業再構築に挑戦する中小企業等を支援。 |
グリーントランスフォーメーション対応支援事業(中小機構交付金の内数) | 中小機構への相談窓口の設置や支援機関の人材育成等によりカーボンニュートラルに向けた取組を支援。 |
JAPANブランド育成支援等事業【8.6億円(5.5億円)】 | 海外市場の獲得を目指す中小企業・小規模事業者等による新商品・サービス開発やブランディング、展示会出展等を支援。 |
このほか、企業の設備投資等を促進する税制の延長などにも取り組みます。
税制整備・改善(設備投資) | |
中小企業経営強化税制の見直し・延長 | 経営力向上計画に基づく設備投資に対する即時償却又は税額控除措置の見直し・延長。 |
中小企業投資促進税制の延長 | 生産性向上に向けた一定の機械装置等の取得等に対する特別償却又は税額控除措置の延長。 |
地域未来投資促進税制の延長・拡充 | 地域経済を牽引する企業の設備投資に対する税制措置(特別償却20~50%又は税額控除2~5%)を延長・拡充。 |
研究開発 | |
成長型中小企業等研究開発支援事業(Go-Tech事業)【132.9億円 (104.9億円)】 | 大学等と連携して行う研究開発やAI/IoT等の先端技術を用いた革新的なサービスモデル開発等を支援。 |
中小企業技術基盤強化税制の見直し | 中小企業が実施する研究開発に要する費用に対する税額控除制度の見直し。 |
4.地域課題解決に向けた取組への支援の拡充等
地域活性化に向けて、地方自治体等と連携し、地域課題の解決に取り組む中小企業・小規模事業者等を支援します。
地域課題を解決する企業への支援 | |
地方公共団体による小規模事業者支援推進事業【12.9億円(10.9億円)】 | 地方公共団体と連携し、地域の実情を踏まえた小規模事業者による販路開拓・生産性向上に向けた取組を支援。 |
地域の持続的発展のための中小商業者等の機能活性化事業【8.8億円(4.6億円)】 | 地方公共団体と連携し、中小商業者等によるテナントミックスの実現に向けた施設整備やまちづくり人材の育成等を支援。 |
地域・企業共生型ビジネス導入・創業促進事業【8.4億円(6.5億円)】 | 地域内外の関係主体と連携し、地域課題解決と収益性との両立を目指す取組や、地域一体で人材育成を行う取組等を支援。 |
工業用水道事業費補助金 【34.8億円(20.3億円)】 | 地域の産業インフラとして重要な工業用水について、事業者が実施する工業用水道施設の強靱化を支援。 |
5.伴走支援・人材確保支援等
経営力再構築伴走型支援モデル等を活用し、中小企業・小規模事業者に対する強力な経営支援を行うとともに、企業における人材育成やマッチングをサポートします。
人材育成・マッチング | |
中小企業・小規模事業者人材対策事業 【8.9億円(8.4億円)】 | 経営課題解決に資する人材確保のため、企業の戦略策定やコンソーシアムによる人材確保支援体制の整備を支援。 |
伴走支援等 | |
中小企業・小規模事業者ワンストップ総合支援事業【54.0億円(40.0億円)】 | 各都道府県によろず支援拠点を整備するなど、中小企業・小規模事業者が抱える様々な経営課題に対応するための体制を整備。 |
小規模事業対策推進等事業【54.8億円(53. 3億円)】 | 中小企業支援機関等を通じて行われる小規模事業者への巡回指導・窓口相談などを支援。 |
以上、中小企業対策では、現下の経済状況への対応と、持続的な成長を可能とする経済社会実現へ向けた取り組みについて、どのような予算が要求されたのかを確認しました。
令和5年度 省エネ補助金は?
経済産業省では、持続的な成長を可能とする経済社会を実現するために、経済社会課題解決への大胆な官民投資が必要だとして、カーボンニュートラル達成のための取り組みに予算を要求しています。そのうち、グリーントランスフォーメーション(GX)の実現に関わる「エネルギー利用の高度化」において、先進的な省エネ設備の導入補助があがっています。
令和4年度は「先進的省エネルギー投資促進支援事業費補助金」という名称でしたが、令和5年度概算要求では、「省エネルギー・需要構造転換支援事業費補助金」になっています。
大枠は変更ないようですが、補助率に変化がみられます。
【補助率】
▶令和4年度:事業内容や企業規模によりますが、10/10、3/4、定額など(1/2、1/3、1/4もあり)
▶令和5年度:2/3、1/2、1/3、1/4
経済産業省の省エネ補助金は、申請期間はおよそ1か月と短く、前年度から制度が大きく変わることもありますので、情報収集・事前準備が重要になります。
まとめ
今回は、経済産業省の令和5年度概算要求から、これからの中小企業対策と、省エネ補助金について確認しました。
来年度の事業計画を立てる際は、活用できる支援策があるか、概算要求などから情報を入手して、来年度の申請に備えましょう。
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