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概算要求 令和5年度国土交通省 6兆9280億円の要求の中身とは

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道路、鉄道、港湾などの整備、まちづくりや防災対策のほか、気象業務、海上の安全確保、観光など、国土交通省は、私たちの暮らしに関わる分野を広く担当しています。

今回は、令和5年度の国土交通省予算概算要求から、要求額の大きな項目などを確認し、政策動向を探ってみようと思います。

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この記事の目次

令和5年度の要求額は?


出典:国土交通省 令和5年度 概算要求概要

一般会計は総額6兆9,280億円で、対前年度比1.18倍となりました。そのうち公共事業関係費として6兆2,443億円を上げています。

上記のほか、以下の項目については、金額を示さない「事項要求」とし、予算編成過程で検討するとしました。

  • 防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策
  • 現下の資材価格の高騰等を踏まえた公共事業等の実施に必要な経費
  • 新型コロナウイルス感染症の影響等を踏まえた地域公共交通への支援・地域交通ネットワーク再構築等に向けた支援、ポストコロナを見据えた観光立国の復活等に必要な経費
  • 整備新幹線の整備に追加的に必要な経費
  • 一般会計から自動車安全特別会計への繰戻しの更なる増額分
  • 新たな「国家安全保障戦略」に係る海上保安体制の強化等に必要な経費

令和5年度の概算要求では、次の3つの柱に重点を置いています。

1.国民の安全・安心の確保
2.経済社会活動の確実な回復と経済好循環の加速・拡大
3.豊かで活力ある地方創りと分散型国づくり

この3つの柱ですが、令和4年度とほぼ同じ内容となっています。では、具体的な事業・施策に関する要求はどうなっているのでしょうか。重点項目別にみていきましょう。
参考・出典:国土交通省 令和5年度 概算要求概要

国民の安全・安心の確保

1つめの重点項目「国民の安全・安心の確保」では、東日本大震災や相次ぐ大規模自然災害からの復旧・復興や、激甚化・頻発化する風水害や切迫する地震災害等に屈しない国土づくりをより強力に進めるための予算などを要求しています。

※以下、予算の大きい箇所などを抜粋して記載します。
計数は令和5年度概算要求額、( )内は対前年度比を表しています。

【災害に屈しない強靱な国土づくりのための防災・減災、国土強靱化の強力な推進】

₋ あらゆる関係者により流域全体で行う「流域治水」の本格的実践:6,710 億円(1.26倍)
₋ 集中豪雨や火山噴火等に対応した総合的な土砂災害対策の加速化・強化 :1,236 億円(1.29倍)
₋ 南海トラフ巨大地震、首都直下地震、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震対策等の推進:2,096 億円(1.20倍)
₋ 密集市街地対策や住宅・建築物の耐震化の促進 :258 億円(1.30倍)
₋ 災害対応能力の強化に向けた線状降水帯等に関する防災情報等の高度化の推進 :125 億円(1.58倍)
₋ 災害時における物流・人流の確保 :5,503 億円(1.21倍)
₋ 盛土の安全確保対策の推進:9,677 億円の内数

気候変動により水災害が激甚化・頻発化することを踏まえて、治水計画を将来の降雨量の増加を見込んだものへと見直し、より一層のスピード感を持って河川整備の加速化を図ります。また、土砂災害に対するハード・ソフト一体となった対策の実施、切迫する大規模地震で想定される被害特性に合わせた実効性のある対策の推進など、自然災害に対する備えを行うための予算を要求しています。

持続可能なインフラメンテナンスの実現

₋ インフラ老朽化対策等による持続可能なインフラメンテナンスの実現:8,969 億円(1.24倍)

将来にわたって必要なインフラの機能を発揮させ続けるため、インフラの機能に支障が生じる前に対策を行う「予防保全」等による持続可能なインフラメンテナンスの実現に向けた予算を要求しています。

【地域の総合的な防災・減災対策、老朽化対策等への集中支援】

₋ 地域における総合的な防災・減災対策、老朽化対策等に対する集中的支援(防災・安全交付金):9,677 億円(1.19倍)

激甚化・頻発化する風水害・土砂災害や大規模地震・津波に対する防災・減災対策、予防保全に向けた老朽化対策など、地方公共団体等の取り組みを集中的に支援するための予算を要求しています。

【海上保安体制の強化】

₋ 戦略的海上保安体制の強化等:2,514 億円(1.14倍)

情勢の変化に対応した更なる体制の強化や、知床遊覧船事故を受けた救助・救急体制の強化等の推進や海上交通の安全確保などに2,514 億円を要求しています。

経済社会活動の確実な回復と経済好循環の加速・拡大

重点項目の2つめ「経済社会活動の確実な回復と経済好循環の加速・拡大」では、社会資本の整備やグリーントランスフォーメーション(GX)・デジタルトランスフォーメーション(DX)の促進、観光立国の復活などに取り組むための予算を要求しています。

【ストック効果を重視した社会資本整備の戦略的かつ計画的な推進】

₋ 効率的な物流ネットワークの早期整備・活用 :4,289 億円(1.20倍)
₋ 地方都市のイノベーション力・大都市の国際競争力の強化 :160 億円(1.23倍)
₋ 航空ネットワークの充実 :150 億円(1.20倍)
₋ 整備新幹線の着実な整備 :804 億円(1.00倍)
₋ 鉄道ネットワークの充実 :243 億円(1.29倍)
₋ 国際コンテナ戦略港湾等の機能強化 :689 億円(1.28倍)
₋ 成長の基盤となる社会資本整備の総合的支援(社会資本整備総合交付金):6,900 億円(1.19倍)

ポストコロナを見据えた持続可能性と利便性の高い地域公共交通ネットワークの再構築などに取り組むための予算を要求しています。

【脱炭素社会の実現に向けたグリーントランスフォーメーション(GX)の推進】

₋ ZEH・ZEB の普及や木材活用、ストックの省エネ化など住宅・建築物の省エネ対策等の強化:1,303 億円(1.18倍)
₋ グリーンインフラ等のインフラ・まちづくり分野における脱炭素化の推進 :171 億円(1.40倍)
₋ 自動車の電動化等の促進 :13 億円(3.19倍)
₋ カーボンニュートラルポートの形成等の港湾・海事分野における脱炭素化の推進:664 億円(2.01倍)
₋ 持続可能な航空燃料(SAF)の導入促進や空港の再エネ拠点化等の航空分野における脱炭素化の推進:27 億円(1.54倍)
₋ 鉄道資産を活用した再エネ導入や沿線地域と連携したグリーン電力の地産地消等の鉄道分野における脱炭素化の推進:4 億円(2.00倍)

新たな時代の課題として、2050年カーボンニュートラルの実現に向けたグリーントランスフォーメーションへの投資の加速があるため、当初比で予算の増加が目立つものもみられます。

国のC02 排出量の約3割を占める民生部門における「住宅・建築物の省エネ対策等」では対策等の強化が示されていますので、ZEH補助金や既存ストックの省エネ改修などの支援内容に変化があるかもしれません。

自動車の電動化等の促進では、予算の増加を要求し、自動車の電動化等の促進に向けた支援策を強化するとともに、自動車の電動化等に対応した道路インフラの社会実装に向けた検討を行うとしています。

【国土交通分野のデジタルトランスフォーメーション(DX)や技術開発、働き方改革等の推進】

₋ デジタルトランスフォーメーションの推進 :80 億円(1.57倍)
₋ オープンデータ・イノベーション等による i-Construction の推進 :21 億円(1.42倍)
₋ 造船・海運の国際競争力強化や海洋開発等の推進 :193 億円(1.37倍)
₋ 建設業、運輸業、海運・造船業、宿泊・観光業における人材確保・育成 :49 億円(1.45倍)
₋ 集中的な統計改革の推進:3億円(皆増)

社会全体でデジタル化が進んでいる中、データとデジタル技術を活用して、行政サービスや業務・組織や働き方を含めて国土交通分野全体を変革していくための予算を要求しています。(インフラ分野のDX、物流DXの推進、国土交通データプラットフォーム、建築・都市のDXの推進など)

また、建設工事受注動態統計調査等の不適切事案を踏まえ、「集中的な統計改革の推進」として、国土交通省の所管統計に対する信頼回復のため、統計の抜本的な改革を実施し、所管統計全般の点検・企画立案・品質改善を図るとしています。

【地方経済・雇用を支える観光立国の復活】

₋ 地方経済・雇用を支える観光の継続的支援と観光立国の復活に向けた施策の推進:171 億円(1.28倍)
₋ 国際観光旅客税を活用したより高次元な観光施策の展開 :270 億円(3.34倍)

観光立国復活に向けた基盤強化のため、国内における新たな交流市場の開拓、コロナ後のニーズ変化も踏まえた地域の魅力向上・持続可能な観光地域づくり、観光産業の高付加価値化などに取り組むための予算を要求しています。また、地方への誘客強化・消費拡大に取り組むため、インバウンド回復に向けた戦略的取組も実施します。

▼観光庁の概算要求はこちらからどうぞ!

観光庁令和5年度概算要求!観光立国復活の基盤強化、インバウンド回復への取組などに約454億円

豊かで活力ある地方創りと分散型国づくり

重点事項の3つめは「豊かで活力ある地方創りと分散型の国づくり」です。暮らしやすい地域づくりへの要求はこれまでもありましたが、今回は、共生社会実現に向けたバリアフリー社会の形成やデジタルの力も活用した分散型国づくり、持続可能な地域活性化、魅力ある住生活環境の整備などを進めていくための予算を要求しています。

【デジタルの力も活用した分散型国づくりや持続可能な地域活性化】

₋ 国土計画の再構築 :3 億円(3.23倍)
₋ コンパクトでゆとりとにぎわいのあるまちづくりの推進 :879 億円(1.18倍)
₋ 個性ある多様な地域生活圏の形成 :270 億円(1.18倍)
₋ スマートシティの社会実装の加速 :37 億円(2.48倍)
₋ 次世代モビリティの普及促進 :7 億円(1.44倍)
₋ 地域・拠点の連携を促す道路ネットワークの整備 :4,998 億円(1.20倍)
₋ 地域の基幹産業の競争力強化のための港湾整備 :194 億円(1.19倍)

新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画やデジタル田園都市国家構想の基本方針を踏まえ、新たな国土計画を策定し、人々が安心して暮らし続けることができる持続可能な国土づくりを推進していくための予算を要求しています。(コンパクトシティの推進、持続可能な多極連携型まちづくりの強化、スマートシティの実装の加速化、次世代モビリティの普及促進、道路ネットワーク・港湾の整備など)

【安心して暮らせる住まいの確保と魅力ある住生活環境の整備】

₋ 既存住宅流通・リフォーム市場の活性化 :426 億円(1.79倍)
₋ 多様な世帯が安心して暮らせる住宅セーフティネット機能の強化 :1,131 億円(1.05倍)

既存住宅流通・リフォーム市場の環境整備や既存ストックの質の向上、住宅・建築分野のDX推進などの取り組みに426億円を要求しています。また、住まいの確保に困難を抱えている世帯や社会的な孤独・孤立の問題を抱える世帯、子育て世帯、高齢者世帯など、誰もが安心して暮らせる多様な住まいの確保を図るための住宅セーフティネット機能の強化に、1,131億円を要求しています。

まとめ

今回は国土交通省から公表された令和5年度の概算要求の内容についてご紹介しました。

国土交通省では「国民の安全・安心の確保」、「経済社会活動の確実な回復と経済好循環の加速・拡大」、「豊かで活力ある地方創りと分散型国づくり」の3つの柱に沿って、予算を要求していました。

それによると、まず第一に、激甚化・頻発化する風水害や切迫する地震災害等に屈しない、強靱な国土づくりを進めること、第二に、感染症の拡大防止を前提に経済社会活動を回復させるとともに、経済の好循環を加速・拡大させるためのグリーン、デジタル等への重点投資、生産性の向上や国際競争力の強化に取り組むこと、そして第三に、ポストコロナにおける住まい方や働き方等を見据え、豊かで活力ある地方創りを行って東京一極集中型から脱した分散型国づくりを推進すること、といった方向性が見えてきます。この要求を元に、1月の国会でどのような閣議決定がなされるのか、注目してみていきましょう。

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