総務省の令和7年度予算概算要求には、能登半島地震の教訓を踏まえた災害対応力の強化や通信・放送インフラの強靱化、サイバーセキュリティの強化などが盛り込まれました。今回は、令和7年度の概算要求額と5つの重要ポイントをまとめました。
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この記事の目次
令和7年度予算概算要求額
地方交付税を含む総額は、令和6年度当初比で3.4%増の18兆8327億円となりました。
交付税を除く一般歳出は、国勢調査の実施などにより、68.8%増の7163億円となっています。
出典:令和7年度総務省所管予算 概算要求の概要
総務省 令和7年度概算要求の方針
総務省の来年度のテーマは、能登半島地震の経験をもとに、安全・安心を確保し、地域経済を活性化して持続可能な社会を目指すことです。また、信頼できる情報通信環境の整備、国際競争力を高めるとともに、国の基盤をしっかりと支える取り組みを進めていきます。
【中心となる5つのポイント】
- 通信・放送インフラの強靱化
- 消防防災力・地域防災力の強化
- 災害時における人的支援の強化
- 地方の一般財源総額の確保等
- 地域DXの推進
- 地域活性化・地域で活躍する人材の充実等
- 自治体間の連携・協力の推進
- 人口減少下の住民サービスの確保
- デジタル空間の健全性の確保等
- 誰一人取り残されないデジタル社会の実現(デジタル・ディバイド対策)
- サイバーセキュリティ対策の強力な推進
- 新技術開発・国際的なルール作り・海外展開の一体的推進
- 「製作・権利処理・流通」の好循環による放送コンテンツの製作力強化・海外展開推進
- 水素等のGX新技術の取組環境の整備
- 経済安全保障の確保等
- 郵便局のユニバーサルサービスの充実と公共サービスの拡大
- 郵便局の活用による地域社会の持続可能性の確保
- 行政運営の改善を通じた行政の質の向上
- EBPMの推進及び基盤となる統計の整備
- 主権者教育の推進と投票しやすい環境等の一層の整備
- 恩給の適切な支給 など
概算要求の主要事項
それでは、各部門の主要事項から、具体的な施策をいくつか選んでみていきましょう。※()内は令和6年度当初予算です。
能登半島地震の教訓を踏まえた国民・住民の安全・安心の確保
■携帯電話基地局の強靱化、復旧体制の拡充、非常時の事業者間ローミングの実現 :54.4億円(新規)
災害時に携帯電話の基地局が停電や通信途絶で使えなくなるのを防ぐため、大容量の蓄電池や発電機、ソーラーパネル、衛星を使って基地局を強化し、復旧の体制も強化します。
■地上波ネットワークの耐災害性強化 :12.9億円(9.7億円)
大規模な災害時でもテレビやラジオの放送が続けられるように、中継局や送信所の耐震対策を強化します。
■能登半島地震を踏まえた消防防災体制の強化 2.4億円+ 事項要求(1.4億円)
災害時に消防隊員が早く被災地に到着できるようにするため、小回りが利く小型車両を配備します。過酷な環境での活動を支えるための高機能エアーテントの導入や、通信機能の強化、空路で現場に行ける救助車両と小型軽量な救助道具の整備などを行います。
地域経済の好循環と持続可能な地域社会を実現するための地方行財政基盤の確立と地域経済・社会の活性化
■マイナンバーカードの利便性・機能向上、円滑な取得・更新環境整備 919.7億円(454.3億円)
マイナ保険証へのスムーズな移行を進め、運転免許証や在留カード等、各種カードとの一体化を目指します。また、市区町村や郵便局などでの申請受付を強化し、カードをより簡単に取得できる環境を整備します。
■ローカル 10,000 プロジェクト等の推進 11. 4億円(6.0億円)
地域の資源と資金を活用した地域密着型のビジネスを支援する「ローカル 10,000 プロジェクト」を進め、地域の経済を活性化させます。また、地域資源を使ったエネルギー事業の計画づくりを支援し、地域でのエネルギー供給を促進します。
信頼できる情報通信環境の整備
■インターネット上の偽・誤情報等への総合的対策の推進 20億円(0.8億円)
インターネット上で広がる偽情報や誤った情報に対処するための取り組みをすすめます。実態調査や被害者の相談対応の実施、対策技術の開発などを行います。
■高齢者等に向けたデジタル活用支援の推進 26.3億円(7.6億円)
高齢者がスマートフォンを使って安心してオンライン手続きができるように、携帯ショップや公民館で「講習会」を開いて助言や相談を行います。
■生成 AI 等を活用したセキュリティの確保 20億円(新規)
生成AIを使ってサイバー脅威の情報を収集・分析し、攻撃を早く正確に検知することを目指します。また、AIの安全な開発と提供のためのガイドラインを作り、アメリカなどの専門機関と連携して安全性の研究も進めます。
国際競争力の強化と国際連携の深化
■我が国における大規模言語モデル(LLM)の開発力強化に向けたデータの整備・拡充 16.5億円(0)
日本のAI開発力を高めるために、大規模言語モデル(LLM)を作るのに必要な日本語データを整備し、開発者に提供します。
■基礎的・基盤的な研究開発等 319億円(303.9億円)
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)による基礎的・基盤的な研究開発等を実施します。
国の土台となる社会基盤の確保
■住民サービス等の提供拠点の集約化等による郵便局の「コミュニティ・ハブ」としての活用推進 1.5億円(新規)
自治体の支所や民間企業が撤退する地域で、郵便局を「コミュニティ・ハブ」として活用し、地域の必要な機能を維持し、行政業務の効率化や生活支援を充実させるための実証事業を行います。
■令和7 年国勢調査の実施 946.6億円(26.6億円)
令和7年度の国勢調査を確実に行い、人や世帯の実態を把握して、地域振興や経済活性化などのための基礎資料を得ることを目指します。
まとめ
総務省の令和7年度概算要求では、能登半島地震で明らかになった課題を踏まえ、通信インフラの強化、防災体制の拡充などを推進します。
また、地域経済の活性化、デジタル社会の実現、国際競争力の強化など、幅広い分野において積極的な施策が盛り込まれています。特に、生成AIなどの新技術を活用したセキュリティ対策や、地域における郵便局の役割強化は注目すべき点です。これらの施策を通じて、総務省は持続可能な社会の実現を目指しています。
【令和7年度概算要求まとめ】
他省庁についても以下にまとめていますので、ご覧ください。