カーボンニュートラルの達成に向け、既存建築物の省エネ改修が喫緊の課題となっています。「業務用建築物の脱炭素改修加速化事業(脱炭素ビルリノベ事業)」は、オフィスビルやホテルなどの既存建築物に対し、外皮の高断熱化と高効率設備の導入を支援する補助金制度です。
今回は業務用建築物の脱炭素改修加速化事業(脱炭素ビルリノベ事業)の概要や申請方法をみていきましょう。
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この記事の目次
業務用建築物の脱炭素改修加速化事業(脱炭素ビルリノベ事業)とは
2050年に「ストック平均でZEB基準の水準の省エネルギー性能の確保」を目指すため、建築物分野においては、既存建築物への対策が不可欠です。
業務用建築物の脱炭素改修加速化事業(脱炭素ビルリノベ事業)は、既存建築物の改修における外皮の高断熱化と高効率機器等の導入を支援します。これは価格低減による産業競争力の強化・経済成長と、建築物からの温室効果ガスの排出削減を共に実現することを目指すものです。
さらに健康性や快適性など、くらしの質の向上を図ります。
なお本事業への申請にあたっては、ZEBプランナー等の専門家の関与が推奨されています。
まずは事業の概要をみていきましょう。
対象の取組
対象となる取組は、以下のいずれかです。
(1) 外皮の高断熱化
「断熱窓」、「断熱材」の導入により、改修後の外皮性能BPIを1.0以下にすることが要件です。
| BPI(Building Palster Index)とは、省エネ法改正に伴い設けられたPAL(パルスター)により算出される年間熱負荷の基準です。以下の式で表されます。 BPI=設計PAL/基準PAL |
なおPALとは、建物の屋内周囲空間の、床面積当たりの年間熱負荷のことです。
(2) 高効率設備の導入
以下のいずれかの導入により、一次エネルギー消費量が省エネルギー基準から用途に応じて30%または40%以上削減されることが要件です。
| ・高効率空調 ・制御機能付きLED照明器具 ・業務用給湯器 |
なお省エネルギー基準の指標は、BEI(Building Energy Index)です。本事業では以下のように、一次エネルギー消費量基準(1.0)を下回る必要があります。
| ■ホテル・病院・百貨店・飲食店等 BEI≦0.7 ■事務所・学校等 BEI≦0.6 |
ただし、以下のいずれかに該当する場合は対象外です。
| ■省エネ適合性判定の義務化開始(2017年4月1日)以降に建てられた建築物で、省エネ判定通知書等によりすでに一次エネルギー消費量が省エネルギー基準から用途に応じて30%または40%以上削減されている ■改修前にすでに、以下の認証を取得している建築物 ・ZEB ・Nearly ZEB ・ZEB Ready ・ZEB OrientedのBELS |
ただし本事業の効果により、ZEBのランクを上げる場合は除きます。
主な要件
主な要件は、以下のとおりです。
(1) エネルギー利用に関する要件
| ■エネルギー管理システム(BEMS)を導入し、原則、空調・照明・給湯等の設備区分毎にエネルギーの計測・計量を行い、データを保存・表示・分析評価できること ■導入するBEMSが、以下の要件を全て満たしていること ・事業報告時に建物全体のエネルギー使用量と設備区分毎のエネルギー使用量を月単位で取りまとめ、その後5年間報告を行うこと。 ・BELS認証を取得する、あるいは取得する予定の建築物全体のエネルギー管理ができるシステムであること |
(2) 環境性能の表示に関する要件について
| ■建築物省エネルギー性能表示制度(BELS)において、省エネルギー性能評価の認証を取得し、完了実績報告時に、「省エネルギー性能表示」およびその表示に関する「評価書」の写しを提出すること |
(3) その他の要件等
| ■事業に関する情報開示ができること。 ■事業完了後5年間、エネルギー使用状況や設備等の導入効果等について分析、自己評価が可能なエネルギー管理体制とすること。またそれらの結果について、必要な報告が可能なこと ■旧耐震基準の建築物については、新耐震基準の耐震性を満たすこと |
なお「断熱窓」「断熱材」を自社で製造する製品を導入する場合等や、故障した製品に係る改修は補助の対象外となります。
補助対象事業者
補助の対象となるのは、日本国内で事業を営み、以下の要件をすべて満たした者です。
| 補助対象者 |
| (1) 定められた基準を満たす断熱窓・断熱材や高効率設備等を導入する、以下の者 ■民間企業 ■個人事業主 ■独立行政法人・地方独立行政法人 ■国立大学法人・公立大学法人・学校法人 ■社会福祉法人・医療法人 ■一般社団法人・一般財団法人・公益社団法人・公益財団法人 ■地方公共団体 ■その他 |
| (2) 必要な経営基盤を有し、事業の継続性が認められる者 |
| (3) 対象設備の所有者であり、その補助対象設備の処分制限期間、継続的に使用する者 |
| (4) 環境省から、補助金等停止措置または指名停止措置が講じられていない者 |
ただし、公的資金の交付先として社会通念上適切と認められない補助事業者は、対象外となります。
対象設備
対象となる設備は、SIIがあらかじめ定めたエネルギー消費効率等の基準を満たし、対象設備として登録・公表しているものに限られます。補助対象設備は、以下のとおりです。
| 設備費 |
| (1)建築外皮 |
| (2) 空調設備 ■電気式パッケージエアコン(EHP) ■ガスヒートポンプエアコン(GHP) ■チリングユニット ■吸収式冷凍機 ■ターボ冷凍機 ■ルームエアコン |
| (3) 照明設備 ■制御機能付きLED照明器具 |
| (4) 給湯設備 ■業務用ヒートポンプ給湯器 ■潜熱回収型給湯器 |
| (5) BEMS本体 |
| 工事費 |
| ■搬入・据付工事、配管工事等の工事費 |
なお、各設備や費用には、別途、要件が定められています。
補助金額
補助金額は、対象製品の種別・能力に基づいて定められた額です。製品区分毎に補助金額を算出するか、設備費および工事費の合計額に対して補助率が適用されます。
| 製品区分 | 定率/定額 | 算出方法 |
| 断熱窓 | 定額 | 製品の種別当たりの補助金額[円/㎡]× 窓面積[㎡] |
| 断熱材 | 製品の種別当たりの補助金額[円/㎡] × 施工面積[㎡] | |
| 高効率空調 | 定率 (1/3) | 設備費及び工事費の合計額に対する補助率1/3 |
| 制御機能付き LED照明器具 | ||
| 業務用給湯器 | ||
| BEMS |
なお1事業あたりの上限額は10億円、下限額は200万円です。
複数年次事業について
本事業は、複数年度事業の申請が可能です。年度の切れ目なく事業を実施できるので、長期的な事業も対象となります。

出典:公募要領
なお各年度の補助金上限額は、交付申請書に記載された補助金申請額です。実施計画で計画した工事等の支払いは、各年度中に完了させてください。
また各年度事業完了の時点で、設備・工事等の項目毎に、支払い金額相当の成果品があることが必要です。
申請について
申請では、「補助事業ポータル」にて必要事項を入力後、必要書類を提出してください。単年度事業の場合、事業全体の流れは、以下のとおりです。(1) 申請
令和7年(2025年)3月31日~11月28日
(2) 審査・採択
(3) 交付決定
令和7年5月下旬頃から随時
(4) 事業開始
(5) 事業完了
令和8年1月31日まで
(6) 完了実績報告
事業完了日から30日以内・令和8年2月5日のうち、早い日
(7) 補助金の支払い
令和8年1月末~3月末まで
(8) 事業報告
事業完了の翌々年度の毎年4月末日まで
事業スケジュールの詳細は、以下の図も参照してください。

出典:公募要領
そのほか、申請区分や期間をみていきましょう。
申請区分
申請では、以下の3つの区分が設定されています。
| ■建物所有者等 ■ESCO事業者(共同申請者) ■リース事業者等(共同申請者) |
複数の事業者が共同申請を行う場合は、全体管理者を選定し、事業全体の手続きを取りまとめてください。
また信託物件においては、信託銀行等の受託者・投資会社等の受益者を含んだ共同申請とする必要があります。その際は申請前にSIIに相談し、事業スキームの事前確認を行ってください。
申請に必要な書類
申請時、提出が必要な主な書類は、以下のとおりです。
| ■交付申請書 ■会社情報に関わる書類 ・会社概要書、定款等 ・登記事項証明書 ・役員名簿 ・決算書 ・登記事項証明書(土地・建物) ・建物概要 ・検査済証等 ・建物平面図、各階平面図 ■省エネ効果に関わる書類 ・Webプログラム算定結果 ・見積書 |
その他、必要に応じて書類の提出が求められます。詳細は公募要項を確認してください。
まとめ
脱炭素ビルリノベ事業は、既存建築物の省エネ改修を後押しする支援制度です。外皮の高断熱化や高効率設備の導入により、建物のエネルギー消費量を大幅に削減する取組が対象です。断熱窓や断熱材、空調、照明、給湯設備などが対象となります。
申請にはBEMSの導入やBELS認証の取得など複数の要件があります。公募要領をよく確認し、不備のないよう、申請を行いましょう。
環境問題への姿勢は、企業評価にも直結します。支援制度をうまく活用し、持続可能な企業への改革をすすめましょう。
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